わたし

なんだかぺりぺりしていた
空がかけてくるように
ちかちかと
やけに
ひかりは瞬いて
あかい夕日は
かたまり
とけかけた
金のはちみつのようだった


ーー なかみは
なんにもかわらなくて
したことと
私の姿が
またわかるだけなんです

舟はゆらゆら
ゆれて
風はつめたい

風の音のほかはなく
しずかだった

わたしは
ただ勝手なはなしを
続けている

ーー 必死なのでは
なくて
怖かったんだ

ーー 見えなかった私が
遠くから
見るように
ゆっくり見えてくる
たくさんの
それだけのこと
だけどたくさん
難しかった


ちゃぽん、と
どこかで
さかなが
はねた

風はみゅんみゅうんと
音をたてて流れ
ほろほろとした木の葉が
風にながれて
日のひかりに
やわらかな
ちやいろ


ーー 思えば
仕方ないばかりで
奇妙なほど
嫌いな自分への
とりつくろい
ばかりだった

ーー 幸せなんだろうと
思っていた
けれど
思うより
しあわせを
与えられていた

ーー 自分ばかりで
まわりが
見えなかった
だから
自分も
見えなかった

きっと、今も
今の自分は
見えないんでしょう

ーー 繰り返し
繰り返し


ひゅううんと
なにを楽器にしているのか
風歌は
たのしげにひびき
すこし
恐ろしい

ーー 前から
わずかに
進めば
前の私が
よく見えて

そこで
ようやくよく見えて

ーー なら、大人になることは
傲慢だったと
わかることなの
見えなかった
すがた欠点が
わかることなの

ーー そしたら
諦めることでは
ないんでしょう

ーー ねぇ

風はさらさら流れ
木の葉さらさらうたい

ーー 卑屈で
疑い深いわたしを
川にながしましょう



久しぶりに
ようやく
笑って
あなたは嬉しそうに
私を見ていた

それが
嬉しかった


川はさらさら流れ
たくさんの木の葉が
きらきら
ちかちかと
夕焼けに照らされ
ひかり
ひかり
それが
あまりに
流れているから
煌めく明るい
金色の川を
くだるようで
うたえてくる


ちゃぽん、と

また
どこかでみずおと

きっと
ずっと
子どものまま
まえの姿が
見えるだけ

今のすがたは
見えないままに

うたいはじめたら
うたは
風とともに
かわのうえ
ぱちぱちと
流れていった
2011-12-19 04:54:44