クラゲの大群

あたたかく、
あかく、光がさしこんで
海のなかはゆんわり温もり
ちいさな銀色の小魚たちが
ひかりひかり、泳いでいく

――あたたかですね、
亀がいう
大分長く生きたらしい
こおらから
白く長い毛がふわふわと流れている

あたたかですね、
もう一度かめがくりかえす
ある海には、死なずのクラゲがいるそうです
老いたら卵にもどり
若くしてまたいきかえる

ほほ、と、亀が笑う
ただ、いきるをしているんですね
幸せでしょうか……
ほほ、と、また亀が笑う
あなたは考えすぎて
不遇なのですね

見上げればゆがんだ空
海水のゆらめきに
まっかなひかり、
夕日がうつっている

はなしやめたいとおもいながら
話やめることもできない
考えやめたいと思い
思いやめたいと思い
それすら、できない

――難儀ですね

――ふふ

ふと、色々忘れてきたと思う
いろいろ、たくさん……

亀はすこしおだやかにほほえんで
ただふたりでふかりんふかりんと、浮かんでいたら
クラゲの大群が波にのって
わずかに瞬きながら流れていった

2012-02-19 11:03:21