キリンの子

角が甘く痛いという、たぶん彼はキリンのひとつなのだろう
首はもうすぐのびるんだろうと思う

はえかけた角がいたがゆいと、またないて
わたしに頬をすりつける

でも、かいたらひりひりするんでしょう?

そう聞いたら、
うん、かゆいやら、かゆいやら
どうして?
おかしくなって、手のひらで撫でてやる
くすぐったそうにみをよじって
撫でているうちに、ねてしまった
睫毛ながいな
桃色の鼻からかすかな寝息がしゅうしゅうきこえる

続けていたミカン作り
――毛糸でオレンジのミカンをつくる――を
もうひとつはじめて
かちこちかちこち、時計の音がしずかにはいる

部屋の温もりがすこし、湿り気をおびた
顔を上げたら窓ガラスのむこうに
しずかに、かぼそい雨がゆっくりふりそそいで
ぱたぱたと波のような模様をつけて
窓ガラスがにじんでいる

なりかけのキリンの子が目をしばたいて
ぼく、ゆめをみたよ、そう小首をあげる
しばらくあたりをみわたして
夢かしら? ちいさな声でつぶやく

背を撫でてやるとふふふん、とわらって
また首をわたしのひざにおいて寝てしまった
なんの夢を見るんだろう

毛糸のみかんは
あざやかなオレンジいろ
ゆがんでまあるい
3つもできた

明日は、キリンの子と散歩にいこう
晴れたらいいな、そうおもう
2012-02-19 13:54:12