赤紫の蝶が
川原のあちらこちらにある
青白い炎のまわりに
とびかっていて
たきぎの焦げるにおいがする
ばちばちはぜる音の中
ぶう、ぶううんと
なにか、重い羽音がする

蛾でもいるのだろう

ばちばちはぜる音のなか
かすかに
きらきらした音がきこえる

かわべりには
背の高い赤い草が
たくさん風にゆれている
すう、と風がとおるたびに
ざわめいている

―― ……

暗い景色の中
ぼんぼりのあかりではよく見えない
あちらになにか
鳥のようなものがたわむれ
はばたいているのがわかる
ばた、ばたた
ばた、たたたん

しんとした
花の香りをふくんだ
かすかな風が
そうっとすぎさる

―― 明日は笑うさ

―― ともにわらってくれるの

囁き声がかわされる
こそこそ
ぼそぼそ

ふいに、大きな風がふいて
ざざざあっと
草が波打った

草についていた
たくさんの滴がおちたのだろう
静かだったあたりが
とたんに
たたん、たたんと音がする
銀色の滴がおち、
きらきらした波紋が
闇の中にえがきだされる

誰かが歌っている
ところどころを
ながくのばす
奇妙なふしで
歌っている

明日はわらう

ばっと
ふたつの大きな影がとびすさった
ばしゃばしゃと
水面があわだち
闇の中にゆれる月があらわれる

金色の波紋が
いくえにも
いくえにも
えがかれる

あぶないところだった
あちらは
みずうみだったのか

つぶやいたら
どこかで鳥の声
ぶっるるる
ぶっるるる……
2012-02-22 21:32:15