ぎもん

まっかな花びらが
まっくろい川の上を
すう、すうと
流れて過ぎ去る

白く、ながい
うつくしい魚が
したのほうにいて
黒い川の中
ゆっくりとおよいで
うろこをきらめかせている

母は、私の
はとぽっぽに
えさをかいたいというダダに
すこしこまっている
だって、はとぽっぽのえさなんて
今はうっていないのよ

そんなことはわかっている
ただ、えさをあげたいのだ
えさをかいたいのだ

母が困ることも分からず
えさがほしいと
また、だだをこねる

えさがほしいのに
えさがないとは
理不尽な

まったく理不尽に
私は怒っている
じゃあもういいよ
おかあさん
あっちでパンを食べよう
そういったら
母は安心したのか微笑んで
そうね、ジャムパンかっておいたからね
そういう

川の底にはたくさんの魚がいるらしい
太陽の光が、黒い水のなかまでとおって
魚のひれがぴかぴかしているのが見える

おさかなは、どうして
いっぱいいるの
ふえるの?

そう聞いたら
母はまた笑う
そうだねぇ

ところどころにおかれた石の上に、
小さな亀がいて
じっとしている

陽をあびているよ
そういうと
母は、そうだね
からだをあたためているんだよ
そういう
からだなんて
うごかしたほうが
あたたまるもの
ふくれっつらで
亀はわかってない
と、怒る
母は、カメだって
あなたはわかってないって
思っているよ、ふふ、と
吐息を洩らすように、笑う

家から持ってきたポットから
あたたかなお茶を入れて
私に渡してくれる
ふと、ジャムパンを
私だけでたべたことや
お茶を私に渡してくれたことがわかる

いつも
わらい、泣き、怒り
不安がりながら
泣きながら、かまってくれた

空を見上げると
夕日にすこし桃色めいた
ひろく薄い水色
まるで、さきほどみつけた
しろく長い魚のような雲が
ふかふかと、流れている

かーらーすー
なぜなくのー
なぜなんだ! なぜだ!

私は歌いながら
空に雲があることを
何の疑問もなく
あれはいい、となっとくしている
2012-02-24 16:31:08