風が真珠色のように
ひかっていると
小さい狐が思う
小さい狐は
ちいさなてのひらにもった
ふたつの木の葉をみつめて
ばかさないとな、と考える
ごさくをばかさないと

そうすると
ふたたび風が柔らかく吹いて
毛並みをあたたかになぜられて
真珠色のようだ、
もういちど、狐は思う

木々の隙間から
太陽はチカチカ瞬いて
狐の金色の毛並みを
ふっかりとぬくもらせている

握った木の葉は
赤色と茶色に
しっとりとしめっていて
化かすのには
とても具合良さそうだった

今日は五作を化かして
おいなりをもらうのだ

けれども、おいなりを
もらうだけじゃだめだから
五作には
よいめぐりあいを
さずけるのだ……

また風がふうい、ふういと
音を立てて吹いてながれる
木々がしゅう、しゅうと
なりひびく
すべてすべて
さきへさきへと流れていく

狐は顔を上げて目を細めながら
金色の毛並みのすべてを
風がなぜてくれた、と
ぬくもりが
かよっていくのを感じる


風音は
高い高い空まで
ひょお、ひょろろろろと
ふいて、ながれ
きえていく

五作の家では
にょうぼのめさいが
おいなりをつくっている

五作はたばこを吹かして
家をなぜる風音に
耳をすませている
そうして、
だいぶ、流れが強いな、と思う

それから心の中で
お地蔵さんに
おいなりをおくなんて
めさいは
変な気がしないだろうか、
そう思う
でもかわいい
可愛らしい
いい、地蔵さんなんだ

今度はめさいといこう
ひとといくと
必ずめっからない
でも、めさいとなら
きっと
めっかるだろう

風の音がなおいっそう強くなって
五作は、地蔵さんは大丈夫かな、と思う
さむくないかな……
そう思った自分がおかしくなる
めさいが鼻歌を歌いはじめる
それからふと、ぽつりと
ひとりごとのように

あんた、
きえる地蔵なんて、おかしい
ばかされているんだとかね
おいなりをおくのが
おかしいとかね
いわれてもね
きにせんでいいよ
いいことはいいことよ

そう、めさいがいう
うれしくて、五作は
つっかえながら
ありがとう、な、と
かえした