夏というのに
薄い氷の流れる川原で
することもなく
小さな石をひろっては
きらきら流れる川にぶつけてた

小さな傘をあたまにかぶった
小さな坊主がきて
さうさうとした藁をさうさうとならしながら
しっぽの長いままに
あのな、ちょっと
いい小石、くれないか、
そういう

みつくろってくれ、
と、いうことかと
川原の石をきょろきょろ探して
白いピカピカ光る
ちいさな小石
きれいと思ったものを
てぬぐいでふいて渡してやったら
むこうにな、人魚の母子がおる
みえるか
そういう

目を凝らしたら向こうの方の
とりのこされた岸のような浅瀬に
人魚の母子がいて
母親の白い肌の柔らかなところに
小さな子がすいついている

母は困ったように
おなかがすいたというけれど
乳はもうでないい
おなかがすいたか
ないとる
ないとる
と、なみだをふたつひとつこぼす

親指をくいくいひっぱられて
ふりかえれば
しっぽの長い奴が
この石は良い石だな
乳がでる
母子の乳にもなろう
もすこしないか
なにせな、わたし
目、やられててな
そういう

どうも真っ赤なもので
目がつぶれている
拭えるかと思い
手ぬぐいで拭いとって
それから見えるか、と聞いたら
おお、みえる
みえる、みえる
みえる、と
歓喜の声をあげて
白い石を探し始める
乳になる石
これで探せる
乳になる石
これで探せる
そう嬉しそうに唄い
川原をごろごろころげまわって
人魚のほうに
ええいもうすぐだ
乳になる石
もうすぐいっぱいもってくからな、
そういった

人魚は嬉しそうに
黒い黒い瞳から
また涙、ひとつふたつこぼし
そうして
ありがとう、ありがとうと
うれしそうにいう

手ぬぐいを
これでぬぐえるとおもう、と
川原の一つの石にくくりつけて
帰ろうとしたら
足をくいっととめられて
ありがとうな、
そういわれた

空を見上げたら
まっさおな
ソーダ水のような空に
雲がひとつふたつ浮かんで
きれいなきれいな
白い月がのぼっている

ああ、そうか、と
なんとなく
思った