魚をさばいていたら
妙な手紙が出てきた
魚の血に染まって
なまぐさくぬれた、和紙に
「わたしのきらいなあなた」と
ていねいな筆跡で書かれていた
そのうしろに「1」とかかれている
どうも気になって
買い求めた魚場にいったら
丁寧に会釈されたのち
あい、すいません
その魚はわれらがとったものとは違います
とりば、あれになります
よかったらいってみてください、と
岸辺に乗り出した岩をさししめされた
その岩に、はりつくように
何人かいる

いってみたら
つりひとだと思えるが
彼らの釣り竿から流れる糸は
空にむかってたちのぼっている
「おう」と一人気づいて言った
私の手がにぎりしめた手紙を見て
それは、にんぎょじゃな
ないしょじゃけんども
いまは海辺の魚とともに
空の魚もとっとるんよ
そうしたら次の人がきて
手紙でるなんて
人魚じゃないと
できんわなぁ、
そういって、一匹の銀色の大きな魚を
わびじゃて、とくれた

白い、てかりてかりとした腹



帰ってさばいてみたら
確かに魚腹の中からもう一つ手紙が出てきて
うしろに「2」とかかれている

あかく、ちなまぐさくそまった和紙
奇麗な光のすじが
ところどころに落ちる

わたしのきらいなあなた
よいまんげつのひに
どうぞ、ともに
あゆみましょう
きれいなあのひのように
ともに、どうぞ
おどりましょう



その夕飯は人魚のさしみにした
もう一つの肉は
しょうゆと砂糖であまからく煮たてた
明日にでも食べようと
子供は不思議な話をしている
だいちをみていたら
だきしめられていることに
きづいたんです
ぼくはじゅうりょくに
ささえられて
だきしめられている
どうにもならなくて
でもね
ねころがるなんて
できないから
ただ、あしもとをみていた
あおぐろいかげ
ぼくのかげ
あしもとをみていた

夕餉の後も体に変化はない
このあと、ふと
死ねなくて
おどろくようだったら
面白いのに
そう思う
窓から不意に月が見えて
ああ、きれいだなぁ、と
見上げていたら
どうしてか、急に
なみだがせりあがってきて
ぼろぼろこぼれた
隣を見たら、おっとも、こどもも
泣いていた


わたしのあなた
わたしのきらいなあなた

あわになっても
つきになっても
ひかりになっても
あなたのこうふくを
ねがってしまう
わたしを
おゆるしください