人に難癖つけたくなってさ
なんだかんだ
説教したい時って
たいていさ
自分に難癖あって
うまくいかないときじゃない?

そう言いながら、
きっこが口から
たばこの煙をはいた

まっしろな煙が
暗い部屋の中に立ちのぼる
たばこ、高くなったよね
全然違う話題を口にしながら
わいたお湯で、紅茶を淹れる

珈琲がいい、珈琲がいいって
きっこはいうけれど
珈琲豆、
いつだって買い忘れてくる

あたしだって
がんばってんですよ
これでもね
課長のはーげはーげはーげ

大人の女の涙はね
にじんで、ぼおっと
流れ落ち
気が付いたら
つらいようなもんで

流れ落ちるまで
気が付かないのね
つらいこと

きっこ、あんた
課長よりも
別れた男がつらいんでしょう

イチゴ味の紅茶
あまくて嫌いだって
オトナな感じがないって
きっこは文句を言うけれど
こっそり、気に入っているの
知っている

きっこは大人ぶりっ子だ

別れた男より
男、さきにしていた間
いろんなもんが
なくなっていった
それが、つらい

きっこはいっつも
堂々巡りだなぁ

気が付いたら
おなじところを
ぐるぐるめぐっているの
おなじことを
ぐるぐる
ぐるぐる
繰り返している

あたし
あの人と
つきあっているあいだ
なんだったんだろう
あの時間

外は、少し湿った
みぞれのような雪が降りつづけている
一年のうちで
いっとう寒い月
窓はくもり
カーテンが、暖房機器のかぜで
すこし、ふんわり
揺れている

音のする生活だなぁ、なんて
変なことを思う
かち、こち
かち、こち
時計の動く音
ヴヴヴヴ、と
低く響く、暖房器具
大きな音と水煙で
ご飯を炊いてる炊飯器

いっつも、人の
悪いところ
そこが悪いんだって
そこが、堂々巡りの
入り口なんだって
人のことはわかっても
あたしの、
悪いところ
つまづいているところは
見えなくなる

つまづいて
つまづいて
堂々巡り

男なくしたより
男がいた間
たくさんなくした
それがつらい

男いると
あんた、なんも見えなくなるもんね

学ぶ力がないのかな
なんで、繰り返すんだろう

きっこの嗚咽
おいたイチゴ紅茶
部屋のあちこちで
白い煙が立ちのぼる

いってあげない
でも、あんたの
そういうところ
私は、嫌いじゃない
恋すると
なんにも見えなくなって
なにをなくしているかも
見えなくなって
夢中になって、恋人と
よろこんで、楽しんで
ともにいるところ

人に難癖つけたい時ってさ
自分に難癖あって
幾癖あって
うまくいってない時だって
人生に夢中な時に
他人なんか
かまいやしないもんね

明日、雪は積もるだろうか
あたたかな紅茶は
口の中でほのかな甘みを残していく
放ったティッシュで
鼻をかみながら
つらいなぁ、って
きっこがいう

つらいなぁ
つらいねぇ

明日、雪がつもったら
ブーツを履いて
ふみにいこう

きっときれいな音がする