「馬鹿ですねぇ」っていうんですね
なゆさんは
馬鹿ですねぇって
その馬鹿ですねぇが
聞きたくて
しょっちゅう訪れていってしまう

おでん屋なんですけどね

……

老婆とロバが話している
どちらもかけた声で
ぱっがり、ぱっがり……

所詮は人間ですよ

ロバがいう
ロバは自分を人間だと
思い込んでるーーだから喋られるんだ

悪いことをした
ひとりで
こころをかかえられないのね

悪いことをしたってことは
おもうより、おもくて
ちゃんと、自分を叱ることが
なかなかうまく
できないの……

ああ、そんなときゃ
鬼神さまにねがいなさい

老婆が笑う

鬼神さま……?

そんなことはしてはいけないと
父親のように
怒ってくれるから

悪いことを
怒ってくれるから……

老婆とロバはどちらも年老いて
ばっかり、ばっかり、
かけた声で笑う

そんな童話を考えたんだ
仕事をしたくなかったからさぁ……
「馬鹿ですねぇ……」すこし
こまったように笑って
なゆさんはいう
馬鹿ですねぇ

……

暗いくらい宇宙のかなたから
銀色の宇宙船が
おちてきて
不時着して
そこから、うまれて
そこから
手を繋ぐように
たすけあっていきてきた

たまに、涙がきこえるのは
やはり、故郷を
おもうからでしょうか

うごかなくなった機械は
こころの力でうごきます
しかし子らは
こころをどこかで忘れてしまった

故郷は
その子らを抱くでしょう
抱きたいのでしょう

よんでるんでしょう
でもこころを忘れてしまうと
聞こえないんです
慈しみさえ聞こえないんです

そんな童話を考えたんだ
仕事をしたくなかったから……
笑いながら告白すれば
……馬鹿ですねぇ……
なゆさんは、やっぱり
こまったように笑っていう
馬鹿ですねぇ

……

ちいさなこどもがいて
テコテコと歩いてくるのです
そうして少し立ち止まり
上を見上げるのです
彼は、なぜでしょう
いつからか
とある惑星と
はなすように
なったのです

彼のははは
あたたかでしたが
彼の弟がまだおさないので
てがかかりきりなのです

かれはこうしてお外に少し遊びにいって
ともだちとわかれたとき
家に帰るとき
それをすこし、思い出すのです
そんなとき
彼はその惑星とはなすのです

そんな童話も考えたよ
仕事をしたくなかったから……
ふ、ほほ、と
なゆさんは笑って
馬鹿ですねぇ、とつぶやいた
お酒もうひとついれましょうか……

……

おでんはよくにこまれていて
熱燗はほどよい
なゆさんは他のお客さんと話している
窓から見える外は
雪がふりはじめたのか
薄曇りにくもり、
寒そうだ

ふと、寂しくなる
いつも、わけもわからず

……

仕事をしたくなかったのは
ほんとうなんだ

ただ、寂しくなると
いてもたっても
いられないんだ

なゆさんは
おでんのお湯をみながら
馬鹿ですねぇ……って
言った

……

たまに、涙がきこえるのは
こころが
ふるえるからでしょうか

とおい
とおい
かなたの星も
かたわらにある
この星も
かわらずに
ふるえるからでしょうか