歓喜

嫌悪の森をさ迷っていた子供が
怨みの石につまづいた
それいらい、憤怒を抱えている

まわりのものは
そんなものは手放しなさいとか
幸せになりなさいとか
天の国にいけないとか
のたまうが

抱えたくもない思いを
抱えこんだ子どもは
ことば、言葉に
戸惑うばかりだった

嫌悪の森をぬけ
より深い憎悪の森にはいったとき
子供のまえに、黒い花が咲いた
それは誰かの祈りだった

その森には
見えないすがたで
さまよう
ゴトクと呼ばれるものがいて
いつものように
無為にとおりすぎた

とおりすがりに
子どもの痛みにふれた

ゴトクは急にたちどまり
なきはじめた
見えない大粒の涙が
ばたばたとくずれおちた

こどもはただ黒い花を見つめていた
空から雨のような水滴が
降ったようにおもえたが
黒い花を見つめることに
いそがしかった

ばたばたと
ばたばたと
涙がおちつづけた

子どもは妙に心地よくなり
抱えていた憤怒や
もろもろが
石となって
胸からぼろぼろ
こぼれおちていく

ごとくの涙と
子どもの石

やがてつみかさなった石に
小さな小川ができる頃
ごとくは子どもの頭をなでて
ようやく泣き止んだ
子どもはなんだか
ほほえんで
はじめて、なにがしか
わからないよろこびで
よろこんだ