龍になる

犬の顔をした女がきて
芋をくれないかという

そのかわり、面白いはなしをするから

庭でとってきたじゃがいも
蒸しとるあいだに
犬の女は、卓にすわって
ひとつひとつ確かめるようにはなす

いぬも、ねずみも
とらも、ねこも
……すべてのけものは
精進すれば龍になれます
精進しなければ、わるくなります
わるくなりますと
土塊となりて
二度と蘇りません

ひともおなじ

しかし
ひとの先は
龍ではないようですが……

じゃがいもはことことむされる
十五分ほどででき上がるだろう

犬の女は
ぽつりぽつりはなしつづける

わたしの体は
ひとにみえますか
ひとのうえに、犬の顔ですか

けだものの性をこえて、こえて
龍に、龍にと
むかっております
けもののなかの
命の心のひとつのようです
本能のなかの……

おんなは
服をすこしめくる
緑色の苔むしたような鱗が
つやつやとひかる
女の腕は
そういえば痩せ細り
かぎつめのように尖っている

龍に、龍に……

おとをたてて鍋が出来上がりをつげる
火からおろして
皿によせ
女にだすと
女は無言でじゃがいもを二つ食べた

そうして
あたまをひとつさげて

なにもいわずに
さっていった

……

龍に……龍に……

空の山のほうに
女の声がこだましている