ナンセンス

ナンセンスさんは
名前からしてナンセンスさんなのですが
柿さんがきらいといわれる
それで先ほど、
柿さんと喧嘩したんですね

ーーなぜ、君のことばは
うけとりがたいか
それは、君が嘘をついているからだ
もちろん、きみは
そんなことはつもりもないのだ
けれど、きみのことばは
結果として嘘になってしまっているのだ
そこには、君の実感がないのだ
実がない
空なのだ
空虚なのだ
空虚というものが、嘘なのだ
口からでる虚ろが
嘘なのだ

君は体験していないし
経験もないし
実感もない、
それだのに、ことばを
口からぽろぽろこぼし
それがあまりに中身がない
うつろだから
君のことばは、心にこない

それだのに
従わせたい、と
きみはほっする
嫌になるほど欲してくる

それも君に実がないからだ
実がない
いわば空威張りだ
したがわせないと
虚しくて不安になるから
君は欲するのだ

ひとにはそんなことは
全部ばれているのだ

かくそうとしたって
全部、ばれているのだ

他人をみくびってはならない

ーー
激昂しながらまくしたてて
ナンセンスさんは
肩をギリギリさせる
柿さんは
そんなナンセンスさんを前に
ぶるぶると
顔を赤らめていた

それから
しばらくしてから
柿さんはナンセンスさんに
ちいさく、わかったって
いう

私はお酒をお湯であたためて
おぼんにのせて
立ち上がって向き合ってるふたりの
かたわらの机においたんですね

そしたら
肩をいからせていたナンセンスさんは
どさっと
重い荷物をおとすように座られる
その前に柿さんも
しずかに座られる

怒ってるんですね
激昂してるんです
でも静かですね

……春の日差しに
とけかけた雪が
屋根から
ぐぐず、どとん、どとん、と
おちて崩れます

お酒をふたりで口にしながら
彼らはもうなにもいいません
なんにもいいません……

明日は晴れるかね……

そんな声が庭先でして
誰かがそれに
なにか、答えました

とおくで、鳥が鳴いていますね
お昼頃にみんなで
カツ丼でも食べに行かないかなぁと
考えていたら

ナンセンスさんが
カツ丼でも食べたいな、と
いわれまして
柿さんも、そうだなぁ
俺もそうおもう、と
答えました

すこし嬉しかった