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バグは
ちいさなふかふかの毛と
ちいさなつめをして
ふいふいるう
ふうふいふいと
なきます
***
いつでも
ひとのそばにいて
ひとのあくむを
おいしくたべ
すいすいすいとる
いきものです
***
やみのこいよるで
くらやみが
まるで音をたてるように
ひきつめあっています
月はなく
ぱたぱたと
なにかの羽音が
たくさん、たくさん、
あちらこちらから
ひびいています
その羽音が
みょうにおもく
きっと大きな蛾なのだろうと
マピルマさんはおもいます
ほどよい
しずかな夜でした
***
マピルマさんは
となりわきにいた
ばぐをかかえこみ
――ばぐはまったくおとなしく、されるがままです
ばぐに耳うちしました
***
――どうしても
とれない
ゆめが
あるのです
――それは
どうしても
とれない
――どうしても
ゆめのなか
――おきてから
くるしみだけが
のこっている
***
水のながれる窓の外
赤い花が
黒い黒いみきに
たくさんさいていて
あおい雨に煙られている
部屋の蛍光灯は
ちかりちかりとまたたいて
やさしい穏やかないろあいで
ひかりを部屋に満たしている
おともなく
ただ、窓のみずが
なみうっているから
雨はまだ降っているのだとわかります
しめったように
あたたかな
ばぐは、ひとつだけ
ためいきをついて
***
しばらくだまって
それから
ゆっくりと
つぶやきました
あくむをすいとること
ぼくはできても
あくむをつくる
きみをかえるのは
きみなんだもの……
***
こころぐろりと
ぬられている
いかり、
にくしみ
ひとを、せめて、さばいて
ひとを、
ひとばかり みている
その目は
きみのめなんだもの……
みょうにさみしそうな声
***
マピルマさんは
はんたいしようとして
そうしたら
なんだか
くやしくなって
かなしくなって
こんなきもちは
はじめてで
むやむやとして
すこしだけ、わらいました
なんだ……
かんたんなんだね
そうなんだよ
かんたんなんだ
かんたんなんだよ
***
マピルマさんは
ばぐの、そのふかふかした毛に
あたまをのせ
めをふせて
ねむりたいとねがう
マピルマさんは
わらいながら
ねむりたいとねがう
ねむる
ふかいねむりが
ほしいと
おもいながら
ねむる
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2012-04-29
07:05:58
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ちいさなふかふかの毛と
ちいさなつめをして
ふいふいるう
ふうふいふいと
なきます
***
いつでも
ひとのそばにいて
ひとのあくむを
おいしくたべ
すいすいすいとる
いきものです
***
やみのこいよるで
くらやみが
まるで音をたてるように
ひきつめあっています
月はなく
ぱたぱたと
なにかの羽音が
たくさん、たくさん、
あちらこちらから
ひびいています
その羽音が
みょうにおもく
きっと大きな蛾なのだろうと
マピルマさんはおもいます
ほどよい
しずかな夜でした
***
マピルマさんは
となりわきにいた
ばぐをかかえこみ
――ばぐはまったくおとなしく、されるがままです
ばぐに耳うちしました
***
――どうしても
とれない
ゆめが
あるのです
――それは
どうしても
とれない
――どうしても
ゆめのなか
――おきてから
くるしみだけが
のこっている
***
水のながれる窓の外
赤い花が
黒い黒いみきに
たくさんさいていて
あおい雨に煙られている
部屋の蛍光灯は
ちかりちかりとまたたいて
やさしい穏やかないろあいで
ひかりを部屋に満たしている
おともなく
ただ、窓のみずが
なみうっているから
雨はまだ降っているのだとわかります
しめったように
あたたかな
ばぐは、ひとつだけ
ためいきをついて
***
しばらくだまって
それから
ゆっくりと
つぶやきました
あくむをすいとること
ぼくはできても
あくむをつくる
きみをかえるのは
きみなんだもの……
***
こころぐろりと
ぬられている
いかり、
にくしみ
ひとを、せめて、さばいて
ひとを、
ひとばかり みている
その目は
きみのめなんだもの……
みょうにさみしそうな声
***
マピルマさんは
はんたいしようとして
そうしたら
なんだか
くやしくなって
かなしくなって
こんなきもちは
はじめてで
むやむやとして
すこしだけ、わらいました
なんだ……
かんたんなんだね
そうなんだよ
かんたんなんだ
かんたんなんだよ
***
マピルマさんは
ばぐの、そのふかふかした毛に
あたまをのせ
めをふせて
ねむりたいとねがう
マピルマさんは
わらいながら
ねむりたいとねがう
ねむる
ふかいねむりが
ほしいと
おもいながら
ねむる