あやまらないで
許せないから
あやまらないで
許しているから、許せないから

……

明け方にいらした鬼は

あまりの怒りに
お顔があこうなりまして
角も金色にはえまして
牙もギラギラされる

許してはおけぬとだんじられる

ーー謝罪をされたら
溜飲がさがりましょうか

たずねれば
溜飲はさがらんといわれる

ーーへしおれば
さがりましょうか

さがらない……

なにをすればさがりましょうか

少し、思案されて
美味しいごはんを食べに行きたい
美しいものをみたい

そういわれる

……

夏の香りがしますから
若木、萌木のはえる香りだそうです

……

奇妙なことですが
許しているのです
謝罪もされたくないのです
でも、

しずかな冷たい水のそこから
あたたかな血がふきたつように
たまに、ぼっと
痛みをかかえ

……

あたたかなものを食べに行きましょう
梅雨があけたら
夏が来ます