この間、この公園の
あそこらへんに
蜂がいたんです

小さな子が
ぷっくりした手のひらで
赤いほっぺをなでながら
話しかけてきた

(いつから居たのかしら)
彼は赤いはんてんをきて
、場違いな黄色の雨靴を履いていた

はんてんには
ハアトマークのフェルトがついていた
(きっと穴を隠したのさ)

わたしたちは
からからに乾いた
さみしい公園の片隅で
ひだまりの中にいる

地蜂がいっぴき
花の周りをまわり
ブンブン
ブンブン
とびかい
その日、日差しは
嘘みたいに
穏やかだった

よく耳をすませたら
蜂が、歌っていた
生きざまの歌

花は枯れてる
凍える風
水は冷たい
だけど

この日
おひさまは
あたたかい

ブンブン
ブンブン

千切れた羽は
あいつにやられた
あいつの足は
私が千切った

悩み、くるしみ
くるしい
くるしい
血まみれ
傷は、かわかない

しかし
今は
あたたかい

確かに
花は枯れていて
蜂は痩せほそってみえた
だけど、蜂は
たのしそうだった

みな、そう、
明日もわからず
ただ
生かされて
不運にも幸運にも

ぶらぶらゆれる
命の運命
世界は大流
きりきりながれ
ああ
小さな私は
すべての流れに
逆らえない

私の命は
かたすみにあり
天の闇の
めだたない
あの小さな光のように
頼りない

明日のことは
分からない
だけど 今は
あたたかい

きっと
光は
いつか消えて
私はまた
傷を思う
悲しくなる
だけど今はあたたかい

ブンブン
ブンブン

羽は痛み
高くは飛べない
もう
高くは飛べない

だけど
なぜだろう
私は
今 この日が美しい
今 この日が
とても うれしい

子供がにっと
私に笑った
欠けた歯の隙間に
虫歯があった

赤いはんてんに
手を隠しながら
今日は
あたたかいねって
言った

2010-12-31 15:06:08