つきあかり

喧嘩して、家をでて
走って走って、少し歩いて、つかれた

さみしくなって
みちっぱたで
壁にもたれて、
ああ、でも
もうすこしいったら、
そういえば、土手原で
川が見えるとおもって
いっしょけんめいここにきた

川辺は夜だから怖くて
そんなことにもおもいあたらなかった
私は馬鹿だと
色々くるしくなって
嗚咽殺してないていたらひとつ
しらない子がきて
背中をさすってくれた
「おい、どした、どした」

その子の手、やわいから
すこし、あっけにとられた
びっくりした

あのちゃ、
蛙、緑の蛙が
草花のなか
とびこんで
おれ、とってきたよ

はあ、この子
わたしをだれと間違えているの

見ろな、

私の顔にも気づかずに
そのこ上さして、いうの

みろな、
月ぃな、やわやわ
かたちぃ かわって
あれなぁ、月ぃなぁ
かたいもんだとおもったけど
やわいもんかなぁ

それで、そのこ
私の隣に座って
手のひらひらいて見せてくれた
ないしょだよって
あまみどりの、小さな蛙が
綺麗な、くろいあどけない
おどろいためをして
わたしをみあげた

ええ、そう
あれは
くもがまわりに
ゆわゆわと、あるんですね
月より、くもが
まえですから
おずおずと、
あれ、この説明じゃぁ変かなぁ、と
おもったけれど
そのこは気にしていないようで

マエデスカラかぁ

くきっとわらって
歯が、半分とがっていたけれどなかなか可愛い
「あのちゃは、なんでもようしってる」

子は蛙をそっと草に逃がした
けれど蛙はいそぎもせず
うむ、というように
ゆっくり手のひらから降りた
それで、
月を見上げた

三人で月をみあげた
月は、ちょっと
かがやきすぎる明るさで
鏡のように
そらにある

そのこがぽつりと言った

あのなぁ、あのちゃ
おれなぁ、いまだに
ゼツボウに会うとちょっと驚く
ずいぶん、あいつらぁ
やり方きたねえんだ
あのなぁ、ちょっと光ぃみえたら
またずどんと、くるしみくれてなぁ
たおれそうになるわ
ほんとしんどい

てははは、と笑う
私も、わらった
でもうまく笑えなかった

夜は闇より ほんのり濃い
あたたかな、それでいて肌寒い
濃厚な春のやさしさ
月、まあるい金色
まわりに青と黒のまだら
すいすい 雲影、やわやわ、やわやわ、
光の上、すべりすぎていく


なんで、見知らぬ子と 蛙と
ここで、わらっているのか分からないけれど
なんだか、愛しいような夜で
迷いもせずにただ傍にいた

背中に、たくさん
いたいものが
あったような気がする
それを一回おろしたら
また、仲直りにいけるだろうか
2011-03-29 17:25:35