花の星
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2011
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たいよう
すずらんの群生
おだやかな青緑の
やわらかいまるい葉に
ちいさな、白い花が
うすくうずくまっている
ぽつ、ぽつと
月はもう
だいぶ、しずみかけていた
遠くの方から
空にひびくように
鳥がないている
ひーぽぽ ひーぽぽ
ちいさな甲高い声だった
人生のしあわせが
わからないうちは
まだ、はじまっていないから
そう、いったら
小さなすずらんを
ゆびで
ゆうゆう、ゆうゆう
彼はつついて
朝露が、そのたびに
小さなすずらんから
ぱっぱ、ぱっぱと
光散った
しあわせが
わからないうちは
まだ、準備段階なんだと思う
どう、思う
そういったら
うす紅色のほほを
すこし、紅潮させて
半笑いで
なにもいわなかった
しあわせが
わかったから
はじまっちゃったんだ
私は
すずらんのそばにすわって
のぞきこんだ
その時、
ちいさなモンシロチョウが
ふわ、ふんわりと
ねぼけまなこで飛び出した
あれ、あれ、
あれ、というような
よっぱらった飛び方だった
あっちの、みどりはもう起きていて
すずらんは
目がさめるのを
いまかいまかと
ねむりこけながら
待ちわびている
人はみな
しあわせがわかるまで
探して、さがして
そんなふうに
毎日、毎日
旅をして
現実をすごして
しあわせがわかったら
はじまるんだと
思う
ねえ
そういったら
うん、と
ふりむいてくれた
わたしは、まだまだ
とれないものが
たくさんある
たぶん、ずっと
それは、出てきてしまう
身のさび
本当に、まだまだ
だけど
わたしは やっぱり
愛のために生きて
命の呼吸を深く
しつづけたい
ふ、と
空がむらさきと赤と桃色と、薄い黄色にかわった
太陽が
うつくしい金色の帯をもって
のぼってきた
うすい待ちわびていた
すずらんたちが
一斉に ひかりはじめる
ああ、息を吸っている
朝露なのか、よろこびのあまりか
ちいさな、光が
花々からたくさんたくさん
まいちった
あまりに美しい
どうか、
私を 見守って下さい
わたしが 忘れないように
わたしが 見失わないように
わたしは 人の中のひとり
人の中で人になり続ける
ただ 人の中の一人
どうか 忘れないでください
生きつづけ 出会い 愛をしり
はじめて 愛をつむぐようになったら
うたわずに
いられない
思わずに
いられない
愛さずに
いられない
命の鼓動を
抱きしめずにいられない
大切だって
わかるまで
だれひとりとして
だれひとりとして
私は あのふちに
落としたくない
そういったら
その人は立ち上がって
いった
おはよう
だから、私も
いった
おはよう
すずらんの群生
気がついたら
白い花よりも
もっと沢山の花が
太陽のひかり
金色の
のぼりつづける太陽に
たくさんのその命を
のばすように
よろこび ふるえ
しずかな風が
草原をかけのぼっていった
うすい、きれいな雲が
うすい雲が
金からももいろにかわる空を
なんともいえない
おもいおもいのすがたで
くつろいでいた
おはよう
わたしは
生きていることが
命が
すきです
ありがとう
Series :
中編
Tag:
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2011-05-21
21:15:53
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おだやかな青緑の
やわらかいまるい葉に
ちいさな、白い花が
うすくうずくまっている
ぽつ、ぽつと
月はもう
だいぶ、しずみかけていた
遠くの方から
空にひびくように
鳥がないている
ひーぽぽ ひーぽぽ
ちいさな甲高い声だった
人生のしあわせが
わからないうちは
まだ、はじまっていないから
そう、いったら
小さなすずらんを
ゆびで
ゆうゆう、ゆうゆう
彼はつついて
朝露が、そのたびに
小さなすずらんから
ぱっぱ、ぱっぱと
光散った
しあわせが
わからないうちは
まだ、準備段階なんだと思う
どう、思う
そういったら
うす紅色のほほを
すこし、紅潮させて
半笑いで
なにもいわなかった
しあわせが
わかったから
はじまっちゃったんだ
私は
すずらんのそばにすわって
のぞきこんだ
その時、
ちいさなモンシロチョウが
ふわ、ふんわりと
ねぼけまなこで飛び出した
あれ、あれ、
あれ、というような
よっぱらった飛び方だった
あっちの、みどりはもう起きていて
すずらんは
目がさめるのを
いまかいまかと
ねむりこけながら
待ちわびている
人はみな
しあわせがわかるまで
探して、さがして
そんなふうに
毎日、毎日
旅をして
現実をすごして
しあわせがわかったら
はじまるんだと
思う
ねえ
そういったら
うん、と
ふりむいてくれた
わたしは、まだまだ
とれないものが
たくさんある
たぶん、ずっと
それは、出てきてしまう
身のさび
本当に、まだまだ
だけど
わたしは やっぱり
愛のために生きて
命の呼吸を深く
しつづけたい
ふ、と
空がむらさきと赤と桃色と、薄い黄色にかわった
太陽が
うつくしい金色の帯をもって
のぼってきた
うすい待ちわびていた
すずらんたちが
一斉に ひかりはじめる
ああ、息を吸っている
朝露なのか、よろこびのあまりか
ちいさな、光が
花々からたくさんたくさん
まいちった
あまりに美しい
どうか、
私を 見守って下さい
わたしが 忘れないように
わたしが 見失わないように
わたしは 人の中のひとり
人の中で人になり続ける
ただ 人の中の一人
どうか 忘れないでください
生きつづけ 出会い 愛をしり
はじめて 愛をつむぐようになったら
うたわずに
いられない
思わずに
いられない
愛さずに
いられない
命の鼓動を
抱きしめずにいられない
大切だって
わかるまで
だれひとりとして
だれひとりとして
私は あのふちに
落としたくない
そういったら
その人は立ち上がって
いった
おはよう
だから、私も
いった
おはよう
すずらんの群生
気がついたら
白い花よりも
もっと沢山の花が
太陽のひかり
金色の
のぼりつづける太陽に
たくさんのその命を
のばすように
よろこび ふるえ
しずかな風が
草原をかけのぼっていった
うすい、きれいな雲が
うすい雲が
金からももいろにかわる空を
なんともいえない
おもいおもいのすがたで
くつろいでいた
おはよう
わたしは
生きていることが
命が
すきです
ありがとう