花の星
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小説
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2011
> まるで
まるで
その日
夕暮れのにおいがした
日が暮れる
太陽がしずむ音は
ほんのわずか
さびしい
またね、といわれるようだった
こうどに はったつした
ぶんめいのために
わたし たちは
じぶんが こうどに
はったつしたように
おもってしまったのです
川原で 腹の大きな蛙が
歌の練習をしていた
その文句が こんなふうだった
こうどに はったつした
ぶんめいのために
わたしたちは
しぜん いのちを
いずれ まるで
じぶんが いかしているような
きもちに なって
しまったのです
しぜんに いかされ
いのちに いかされて
いる
だけであるのに
こんなことは
二束三文の物語でさえ
まるで自嘲するように
すらすらと、書いてある
高度に発達した文明のために
私たちは
自分たちが
子の世界 子の地球の
支配者のように
思いこんでしまったのです
エゴイズムだけできた
子どものように
高度に発達した文明に
置いてけぼりにされた
程度の知れた私たちは
まるで文明に遊ばれるように
文明と自分たちを
わけて考えることができなくなり
文明により
地球の支配者
地球をもてあそぶことが出来ると
思いこんでしまったのです
まるで エゴイズムでできた
子どものように
高度に発達した文明の為に
私たちは
地球 この星が
産み落とし 生かしてくださっている
その子どものひとりであることを
忘れてしまい
高度な文明のために
さまざまなことを
見ないことにしたのです
しかし今さいきんの物語は
まるで自嘲から自傷に
ものを移したように
わたしたち みずからを
痛めつけているものばかりです
蛙はまだ
げーーーげえーーー
と ないています
川の原
あちらから大きな顔をした
まっしろしろすけが
かけてきました
――大切なことを
忘れてしまいました
私 何を忘れたのか
忘れてしまって
――顔ではないの
おくさん
そういったら
奥さんは
けは、けは、と笑いました
あら、ほんとう
わたし、まっしろしろすけに
なってしまいましたね
そう 笑いました
それでも命の輪の中の
ひとつですのに
なぜか、その輪の外に
ひとは 自分をおいてしまうようです
それでも 輪の中のひとつ
たがいのひとりであるのに
あいての姿しか
見えなくなるようです
そうしつと、かきます
かえるの歌は
とうとうと
続いています
夕暮れに
すいこまれるように
つづいています
道端をふとみたら
真っ白な花が
さようなら、と
おちていく太陽のささやきに
ひかり、かがやいていた
さようなら またあした
いつだって また明日は
わずかに寂しい挨拶です
そして、明日をまつような
わずかな光 わずかな優しさ
そういったものを
宿している
いつだって
はなれたら
いつだって
またお会いします
今日の私
今日のあなたに
さようなら
明日の私に
明日のあなたに
また あした
日も 月も
生まれ変わり続ける
時 いっこくの
ひとつ ひとつ
変わり続ける
あたらしいものが
ふるくなって
あたらしいものが
ふるくなって
さようなら おはよう
ですから、
さようならは
やっぱり
さびしいのです
Series :
中編
Tag:
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2011-08-02
17:31:26
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夕暮れのにおいがした
日が暮れる
太陽がしずむ音は
ほんのわずか
さびしい
またね、といわれるようだった
こうどに はったつした
ぶんめいのために
わたし たちは
じぶんが こうどに
はったつしたように
おもってしまったのです
川原で 腹の大きな蛙が
歌の練習をしていた
その文句が こんなふうだった
こうどに はったつした
ぶんめいのために
わたしたちは
しぜん いのちを
いずれ まるで
じぶんが いかしているような
きもちに なって
しまったのです
しぜんに いかされ
いのちに いかされて
いる
だけであるのに
こんなことは
二束三文の物語でさえ
まるで自嘲するように
すらすらと、書いてある
高度に発達した文明のために
私たちは
自分たちが
子の世界 子の地球の
支配者のように
思いこんでしまったのです
エゴイズムだけできた
子どものように
高度に発達した文明に
置いてけぼりにされた
程度の知れた私たちは
まるで文明に遊ばれるように
文明と自分たちを
わけて考えることができなくなり
文明により
地球の支配者
地球をもてあそぶことが出来ると
思いこんでしまったのです
まるで エゴイズムでできた
子どものように
高度に発達した文明の為に
私たちは
地球 この星が
産み落とし 生かしてくださっている
その子どものひとりであることを
忘れてしまい
高度な文明のために
さまざまなことを
見ないことにしたのです
しかし今さいきんの物語は
まるで自嘲から自傷に
ものを移したように
わたしたち みずからを
痛めつけているものばかりです
蛙はまだ
げーーーげえーーー
と ないています
川の原
あちらから大きな顔をした
まっしろしろすけが
かけてきました
――大切なことを
忘れてしまいました
私 何を忘れたのか
忘れてしまって
――顔ではないの
おくさん
そういったら
奥さんは
けは、けは、と笑いました
あら、ほんとう
わたし、まっしろしろすけに
なってしまいましたね
そう 笑いました
それでも命の輪の中の
ひとつですのに
なぜか、その輪の外に
ひとは 自分をおいてしまうようです
それでも 輪の中のひとつ
たがいのひとりであるのに
あいての姿しか
見えなくなるようです
そうしつと、かきます
かえるの歌は
とうとうと
続いています
夕暮れに
すいこまれるように
つづいています
道端をふとみたら
真っ白な花が
さようなら、と
おちていく太陽のささやきに
ひかり、かがやいていた
さようなら またあした
いつだって また明日は
わずかに寂しい挨拶です
そして、明日をまつような
わずかな光 わずかな優しさ
そういったものを
宿している
いつだって
はなれたら
いつだって
またお会いします
今日の私
今日のあなたに
さようなら
明日の私に
明日のあなたに
また あした
日も 月も
生まれ変わり続ける
時 いっこくの
ひとつ ひとつ
変わり続ける
あたらしいものが
ふるくなって
あたらしいものが
ふるくなって
さようなら おはよう
ですから、
さようならは
やっぱり
さびしいのです