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夢
ジャングルのおおひろば
すこしばかり、木々のないところで
わたしはひとつの大蛇になって
たくさんのうろこを
さゆうにうごかして
ゆっくりと
ひなたぼっこをしておりました
わたしは
わたしの想いが
うろこのひとつひとつに
しっくりとなじむのをまっていました
全身でおもいを
しらべていました
それはもしかしたら
人間では消化というものに
なるのかもしれません
たれかからきた
想いが 私の思いを
かきみだし
そして 私は
私を忘れるのでした
うろこがとげとげとして
なかなか 私を忘れるのでした
見上げたら青い空
青がうすまったところに、
白く長い月と
きつすぎる太陽が
ふたつ、円をなぞるように
ならんでいました
私は金色の目をにかいゆっくりとじて
わたしの思いを
ゆっくりとぜんしんに
染み渡らせるように
なじむのを待っていました
太陽と月の明かりが
ゆっくりとそれを見守ってくださいました
お月様の目は たまにはとじるのに
太陽の目は ずっとあけ放している
私はそれはとても不思議でした
ジャングルは平穏な昼に差し掛かっていました
それはところどころで
大きないさかいと小さないさかい
大きな平和と小さな平和が
毎日のようにあるということでした
風がとうめいで
私のうろこをすうすうと通っていきました
空を見上げると
白地に茶模様の大きな鷹が
けーんけんと啼いて
まあるく飛び回っておりました
私はいつか、この想いがなじんだら
空をゆっくりと飛ぼうと思います
それは、もしかしたら
蛇には見果てぬ夢かも知れません
だけど、わたしは私なりに
空に憧れているのでした
思いは随分 なじんできたようでした
それはたくさんの苛立ちの下に
ただ わかっていることと
わかっていないことを おぼえ
ただ 口にしたいことと してはいけないこと
口にしたくないことと
たくさんの 黙っていたいことを
もっていました
私はゆっくり頭を上げて
チーターにかわりました
チーターは白い毛に茶色のはんもんを
つけていたように思えたので
そうして
ジャングルの隙間をぬうように
ただ走りました
走り始めました
Series :
短編
Tag:
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2011-08-05
12:08:54
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すこしばかり、木々のないところで
わたしはひとつの大蛇になって
たくさんのうろこを
さゆうにうごかして
ゆっくりと
ひなたぼっこをしておりました
わたしは
わたしの想いが
うろこのひとつひとつに
しっくりとなじむのをまっていました
全身でおもいを
しらべていました
それはもしかしたら
人間では消化というものに
なるのかもしれません
たれかからきた
想いが 私の思いを
かきみだし
そして 私は
私を忘れるのでした
うろこがとげとげとして
なかなか 私を忘れるのでした
見上げたら青い空
青がうすまったところに、
白く長い月と
きつすぎる太陽が
ふたつ、円をなぞるように
ならんでいました
私は金色の目をにかいゆっくりとじて
わたしの思いを
ゆっくりとぜんしんに
染み渡らせるように
なじむのを待っていました
太陽と月の明かりが
ゆっくりとそれを見守ってくださいました
お月様の目は たまにはとじるのに
太陽の目は ずっとあけ放している
私はそれはとても不思議でした
ジャングルは平穏な昼に差し掛かっていました
それはところどころで
大きないさかいと小さないさかい
大きな平和と小さな平和が
毎日のようにあるということでした
風がとうめいで
私のうろこをすうすうと通っていきました
空を見上げると
白地に茶模様の大きな鷹が
けーんけんと啼いて
まあるく飛び回っておりました
私はいつか、この想いがなじんだら
空をゆっくりと飛ぼうと思います
それは、もしかしたら
蛇には見果てぬ夢かも知れません
だけど、わたしは私なりに
空に憧れているのでした
思いは随分 なじんできたようでした
それはたくさんの苛立ちの下に
ただ わかっていることと
わかっていないことを おぼえ
ただ 口にしたいことと してはいけないこと
口にしたくないことと
たくさんの 黙っていたいことを
もっていました
私はゆっくり頭を上げて
チーターにかわりました
チーターは白い毛に茶色のはんもんを
つけていたように思えたので
そうして
ジャングルの隙間をぬうように
ただ走りました
走り始めました