花の星
>>
小説
>
2011
> その
その
それは
ごくあたたかな
金色のひかり
やわらかな
鋭い刃のような
オーロラのような
雲のすきまから
さしこんだ
ひかり
私は岬にいて
その光がゆっくりと
さしせまるのを
感じていた
やわらかな光
ひかりだった
私はしずまりかえり
こころが
ただ余分なものもなく
私に染み渡るのを
感じていた
淡い光の粒が
空をまっていた
いつもわずかに
畏怖を思う
私はしずまりかえり
こころに
なんの苛立ちもなく
ただ だから
染み渡るのを
感じていた
―― 我にこだわれば
思いは消え
思いには気づかない
―― 我にこだわれば
こころは消え
こころは失われ
カモメのような鳥
金色の鳥が
風の中 ひゅうひゅうと
うたっていた
―― 君よ
感謝をわするるな
―― 君よ
君が 人の力を借りて
生きていること
わするるな
私は 笑っていた
ただ 笑っていた
優しい滴が
海辺のむこう
虹をかけはじめる
虹はかけはし
―― ただ 君よ
わするるな
何もかもに
生かされていることを
生かしてきたわけでは
ないことを
―― 君よ わするるな
きみのために
世界はなく
世界のために
君がある
―― 君よ ただ
わすれてくれるな
君のために
何もかもが
あるわけではなく
何もかものなか
何もかものために
君がある
―― 笑いなさい
私は泣いていた
笑いながら
泣いていた
少し濁った空に
虹がかかっていた
遠くは、青く
ましろい雲が流れ
雷の雲もあった
鳥がうたっていた
人の無力
人のおろかしさは
その無力を
知らないからなのでしょう
ですから
生き方が
他への毒と化します
生かされています
生かしてきたわけではなく
互いに
生かされてきました
ただ その場で
他のために
自分を
生かしてくださる
他命のために
自分をつかい
動くのが
人間でした
―― 君よ
忘れてくれるな
君のために
すべてがあるわけではなく
すべてのために
君がある
―― 君よ
忘れてくれるな
君があるのは
全てのおかげ
君があるおかげで
全てがあるわけではない
―― ただ
忘れてくれるな
鳥はうたっていました
Series :
短編
Tag:
... 前頁「羊の話」へ
... 次頁「カエルに私」へ
2011-08-12
03:23:02
花の星
>>
小説
>
2011
> その
Copyright © by mogiha(
https://ahito.com/
) All Rights Reserved.
ごくあたたかな
金色のひかり
やわらかな
鋭い刃のような
オーロラのような
雲のすきまから
さしこんだ
ひかり
私は岬にいて
その光がゆっくりと
さしせまるのを
感じていた
やわらかな光
ひかりだった
私はしずまりかえり
こころが
ただ余分なものもなく
私に染み渡るのを
感じていた
淡い光の粒が
空をまっていた
いつもわずかに
畏怖を思う
私はしずまりかえり
こころに
なんの苛立ちもなく
ただ だから
染み渡るのを
感じていた
―― 我にこだわれば
思いは消え
思いには気づかない
―― 我にこだわれば
こころは消え
こころは失われ
カモメのような鳥
金色の鳥が
風の中 ひゅうひゅうと
うたっていた
―― 君よ
感謝をわするるな
―― 君よ
君が 人の力を借りて
生きていること
わするるな
私は 笑っていた
ただ 笑っていた
優しい滴が
海辺のむこう
虹をかけはじめる
虹はかけはし
―― ただ 君よ
わするるな
何もかもに
生かされていることを
生かしてきたわけでは
ないことを
―― 君よ わするるな
きみのために
世界はなく
世界のために
君がある
―― 君よ ただ
わすれてくれるな
君のために
何もかもが
あるわけではなく
何もかものなか
何もかものために
君がある
―― 笑いなさい
私は泣いていた
笑いながら
泣いていた
少し濁った空に
虹がかかっていた
遠くは、青く
ましろい雲が流れ
雷の雲もあった
鳥がうたっていた
人の無力
人のおろかしさは
その無力を
知らないからなのでしょう
ですから
生き方が
他への毒と化します
生かされています
生かしてきたわけではなく
互いに
生かされてきました
ただ その場で
他のために
自分を
生かしてくださる
他命のために
自分をつかい
動くのが
人間でした
―― 君よ
忘れてくれるな
君のために
すべてがあるわけではなく
すべてのために
君がある
―― 君よ
忘れてくれるな
君があるのは
全てのおかげ
君があるおかげで
全てがあるわけではない
―― ただ
忘れてくれるな
鳥はうたっていました