しろ

腹を下にねむっていたら
外では鈴虫が鳴いていた。
ただ、こまかいあめが
ぽ、ぽ、ぽと
おりてきて
それが鈴虫の声とあいまって
星がながれおちてきたように思えた

起き上がり
しばしばする目をこすりながら
窓の外を見ると
白い蛙がいた
背の骨のあたりに、ぼこぼこと
なんこかのいぼがあって
それがくえ、くえ、と
小さなきれいな声で鳴いて
みずをいっぱいください、という

それで茶銀の茶碗に水をいれて
もっていってのましたら
ああ、ありがたいと
何度もおがんで 3回口につけて

なにか、困っていることはありますか
あんでも、かなえてあげましょうという

しばらく考えて
自身が制御できない旨を伝えたら
彼はわらって、鈴をならしなさい、という
おなかに獣がいますからね
暴れる前に 鈴を鳴らしなさい
逃げれば呑まれずにすみますから

そういう
あと、ふたつは、というので
しばらく考えて
なにも思い浮かばなかった
だから、また今度で といったら
ほほえんでやさしげな金色の目で
ええ、とおっしゃった

そのまま、気がついたら彼の姿はなく
窓の上には月が煌々と輝いて
わたしはすこし
もういちど、横になって
それを見あげていたら
胸から、さびしいようなかなしいような音がわいて
それが深く静かな音なので
ただ耳澄まし
そのまま寝入ってしまった

どこか遠くで、白く大きな鳥が鳴いたような気がした
2011-09-13 19:54:32