ラジオ

ラジオのボタンをひねったら
どこにつながったのか
小さな電流がぴちぴちながれて
誰かの声に、つながった

――　ひとの　のうは
考えていないんです

あのね　のうにながれる
しなぷすが
考えているんです

しなぷすが
のうを　つかって
かんがえているだけに
すぎないんです

のうは　しなぷすが
かんがえたことを
つたえるために
うごいている

それは
電流と　似ているんです

――　……はは

――　うん

静かな声の
女と男だった
ただ、ぽつ、ぽつりと
話を続けている

――　海のそこは
空のなかより
音が響くんだそうです

――　なら　さかなは
うたを、うたって
いるのでしょうか

――　うた？

――　だって鳥も
うたを、うたっている

魚も、きっと
うみのなか
歌っているんだ

――　　ちり　ち　ちり　ほん　ちり

――　あいしているが
ひとがうたった
最初のうたって
ほんとうなのかな

――　……が
にんげんを　みんな
　好きかっていうと
そうでも　ないんですね

――　……

――　だれだって

――　

――　ほしのおとがきこえます
――　星、　うん
ちかちかしているね

――　さかなの音がきこえます
――　さかな　うん
しゃりしゃりしているね

――　とりのおとがきこえます
――　鳥　うん
ぴちゅぴちゅしているね

――　人のおとが　きこえます

――　うん

――　

うみも　地も　そらも
はなしているね

そこで、ぷつっとラジオは切れて
あとは、ざーっと
砂の音

ただ無音がながれるばかり