呼音

金色のはちみつのような海
くりかえし
繰り返し
のってりした波が
よせては
ひいて
キラキラ光る

森は金の海の少し隣で
いい月夜だと
空を見上げている

鳥がちいさなあくびをした
けものが呼吸をして
だれかがくしゃみをした

あなたの
いい加減が好き
かたいけものは
せせこましい
かたちで
いい

きみの
たしかさがすき
柔らかいけものが
ぶよぶよな
かたちで
いった

あなたの
手応えが好き
あいまいが
あいまいなまま
いう

きみの
あいまいさが好き
たしかさが
たしかなまま
いう

おもいは かたちなく
ものものは
かたちにおさまりながら

白いつきのした
銀色の霧が舞う

目が覚めてしまった鹿が
おぼつかないまま
うろうろ歩き
起こされたネズミが
いらいらと寝床をかえる

あいまいは
たしかなまま
あいまいに
たしかさは
あいまいなまま
たしかに

歩んでる

小さなものものの
音が重なりあう
とくりとくりと
繰り返し
繰り返し
波のように
たかなり
しずまり
ひびいていた

森は月明かりのした
ゆっくり
呼音を続ける
2011-10-07 21:20:25