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2011
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手前勝手
あわい
赤い、こまかい花に
小さな音を立てて
霧のような雨が
ふりおちて
私は、さむいようだと思いながら
小さな舟の上
貴方とふたり
川を下っておりました
風は冷たく
凍えるようでしたが
それほど、つらくはありませんでした
いつの間にか
ずいぶん、寒くなったようです
上からの雨つぶが
川面にあたり
そのたびに
キラキラとひかり
氷のような花を咲かせております
それが、幾重も幾重も
重なり咲いて
うつくしいと
思いました
ひかひか きらきら
いつしか川面には
わずかな氷がまじりはじめ
そのしたのほうに
銀ぴかぴかと
背びれを懸命にうごかす魚が
たくさんたくさん
泳いでいるのが見えました
―― たしかに
ほかのものに
じぶんの きもちの 責任を
なすりつけながら
被害者ぶる ひとが
わたしには なにか
とても
いやなものに おもえておりました
―― ずっと ずっと
かかわり
ひとと おのれの
かかわり
おのれも、そのかかわりをつくる
ピースのひとつであると
思っている人と
―― ひとと おのれの
かかわりに
みずからが
毒を 混ぜて
だのに
被害者になる ひとが いて
わたしには それが
なにか いやなものに
おもえておりました
風が幾分つめたくて
じっと、貴方を見ながら
私は、私のほほが
凍っているのを
感じ
空を見上げれば
細かい雨は一度止み
上かも下かも
わからぬほどに
白と灰色の雲が
だんだらに、たっぷりと空をおおって
保っておりました
―― 私の
このきもちは
まちがっているように
思えます
―― それでも
ひとの
責任を
もとめる ことが
とくいだのに
―― ひとの
りゆうの なにひとつ
わからず
おもえず
―― みずからの
責任は 追うことさえ
できず
―― わたしを こんなおもいに しやがってと
ひとを たたきのめす
あのひとらの目には
ひとと おのれを くらべ
侮辱をうけたかのような
きもちばかり
見えるのでしょう
―― あのひとのほうがいいと
ねだるきもちは
こえられないものですか
いつだって ないものねだりを
している
それで ひとに すかれたがる
じぶんさえ じぶんを
好きにならず 誇れず。
―― わたしは
私の、この気持ちは
間違っていると
私は 思うのです
―― ひかれながら
惹かれた瞬間
それを 屈辱と覚え
相手の責任にする ひとが
ひとにつばをはいて
笑っている。
おのれの気持ち を
人の責任に する人が いる。
―― いつか 人の 気持ちが
すべて その人の目
うつることを
その人の口に
もどることを
望んでいる
気がついたら
目の前に、貴方は居なくて
あれ、と思ったら
ただ、さむざむとした空の下
小さな白い蛇が
く、く、く、と
空を見上げ
さけんでいた
きこえもしない 声で。
うすい、あおい
むらさきいろの
凍るような空から
雨が、しずかに落ちてくる
私も、傘を閉じて
それで、叫んだ
きこえもしない。
Series :
短編
Tag:
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2011-12-12
20:02:40
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赤い、こまかい花に
小さな音を立てて
霧のような雨が
ふりおちて
私は、さむいようだと思いながら
小さな舟の上
貴方とふたり
川を下っておりました
風は冷たく
凍えるようでしたが
それほど、つらくはありませんでした
いつの間にか
ずいぶん、寒くなったようです
上からの雨つぶが
川面にあたり
そのたびに
キラキラとひかり
氷のような花を咲かせております
それが、幾重も幾重も
重なり咲いて
うつくしいと
思いました
ひかひか きらきら
いつしか川面には
わずかな氷がまじりはじめ
そのしたのほうに
銀ぴかぴかと
背びれを懸命にうごかす魚が
たくさんたくさん
泳いでいるのが見えました
―― たしかに
ほかのものに
じぶんの きもちの 責任を
なすりつけながら
被害者ぶる ひとが
わたしには なにか
とても
いやなものに おもえておりました
―― ずっと ずっと
かかわり
ひとと おのれの
かかわり
おのれも、そのかかわりをつくる
ピースのひとつであると
思っている人と
―― ひとと おのれの
かかわりに
みずからが
毒を 混ぜて
だのに
被害者になる ひとが いて
わたしには それが
なにか いやなものに
おもえておりました
風が幾分つめたくて
じっと、貴方を見ながら
私は、私のほほが
凍っているのを
感じ
空を見上げれば
細かい雨は一度止み
上かも下かも
わからぬほどに
白と灰色の雲が
だんだらに、たっぷりと空をおおって
保っておりました
―― 私の
このきもちは
まちがっているように
思えます
―― それでも
ひとの
責任を
もとめる ことが
とくいだのに
―― ひとの
りゆうの なにひとつ
わからず
おもえず
―― みずからの
責任は 追うことさえ
できず
―― わたしを こんなおもいに しやがってと
ひとを たたきのめす
あのひとらの目には
ひとと おのれを くらべ
侮辱をうけたかのような
きもちばかり
見えるのでしょう
―― あのひとのほうがいいと
ねだるきもちは
こえられないものですか
いつだって ないものねだりを
している
それで ひとに すかれたがる
じぶんさえ じぶんを
好きにならず 誇れず。
―― わたしは
私の、この気持ちは
間違っていると
私は 思うのです
―― ひかれながら
惹かれた瞬間
それを 屈辱と覚え
相手の責任にする ひとが
ひとにつばをはいて
笑っている。
おのれの気持ち を
人の責任に する人が いる。
―― いつか 人の 気持ちが
すべて その人の目
うつることを
その人の口に
もどることを
望んでいる
気がついたら
目の前に、貴方は居なくて
あれ、と思ったら
ただ、さむざむとした空の下
小さな白い蛇が
く、く、く、と
空を見上げ
さけんでいた
きこえもしない 声で。
うすい、あおい
むらさきいろの
凍るような空から
雨が、しずかに落ちてくる
私も、傘を閉じて
それで、叫んだ
きこえもしない。