とかげへびはな

これはトカゲ蛇花といいます
そう、幾重にも
白い花びら
重ねて咲いた花を指さして
あなたはいう

うそ、　っていったら
うん　嘘です
なんていう

――　わたし
嘆いては
いないんです

そう、いったら
あなたは、うん　と
いってくれて
私は　それが
どうにも
うれしかった


――　　願いでは　ないんです

うん


――　無力な人間は
無力なまま
無力ではないと
おぼえ誤り

不完全なまま
完全と　間違う


とかげへびはなが
たくさん咲いている中
その、ほそいあいまを縫うように
川は流れ
手を伸ばせば
花にふれ
しぶきがぱたぱた、ふりかかり
まっきろの
とても大きなお月様が
白い白い花花の中に
ゆっくり、顔を光らせている
青い茎に
まっすぐ咲き誇る花
黒く湿った地面

白に　薄い赤
青みがかった、花にかこまれ
舟は流れ　進んでいる


――　いつか　無力で　不完全で
ただ　必死なひとたちが
形の違う
欠点を抱え　間違いを抱え
それでも
許しあい　笑いあい
信頼しあえる世界を

のぞむ