ご武運を

―― ちかごろね

そういう私をみながら
あなたは、にこにこしている
ただ、なんのおともなく
舟はすすんでいる

ぱらぱら
たまに雨が降る
金色の、雨が
ぱらぱら
ほほに
落ちてくる


―― いろんな、すきなひとに
 伝えたい言葉が できました。


どこかで
かえるがないていた
ぐうう ぐうう ぐうう

さむくも
あたたかくもない
ただ、空には
どこかで
しずんでいるだろう
太陽のひかりをうつした
金と、ももいろの
うすく、よこにながい雲が
えんえんと
かぜに、流れている

川は、そんな 空の色を
ひたすらうつして
白く、ひかっている

わたしたちの舟は
ゆらりゆらり
はこばれていく

どこからか
白い、花びらが
ふわふわと
まいおちて
ぴかぴか
そういう光に
きらめいて
うつくしい、と
ひとつ、てにしたら
それは、花びらでも、ゆきでもなくて
きらきらした
羽毛だった

―― まるで「ご武運を」と、
親指を立ててかわす
いさましい挨拶のように
いいたいことばが
できました

わたしの話を
きいているのか
いないのか
あなたは
くすくすわらって
どこで手にした草なのか
あおく、長い
笹のはっぱで舟をつくって
川にながして、あそんでる

 あれが いちごう
 あれが にごう
 がんばれ いちごう


ひかりながら
笹の舟が、川を下る
ひかり ひかり

せっかく
ふたりでいるのに
わたしは、なんだか
ちょっぽけなことばかり
気にしていて
もったいないなぁ
なんて 思いながら
同時に、ほんとうに
しあわせだなぁ と、おもう

―― ひとも じぶんも
 せめるこころを なくせば
 あるのは ただ あるがままの

  すべて だった

 だれが わるい
 なにが よい
 それをいって
 なにが かわる

 なにを こだわっていたのか


―― 嫌われたくないとか
 好かれたいとか

 ひとと いれば
 きずつくけれど
 どんなに  いやでも
 ひとは ひとと ともにしか
 しあわせは つくれない

 かかわりのなかで
 おもい あたため
 つたわり あたえられ
 それが しあわせなんでしょう



―― どう流れるかも
 わからない、ごう流

 ながれは
 だれのつごうも
 まっては
 くれない



―― 生きて、いきて いきて
 しあわせを めざせ シャケ


いったら 笑う
シャケって、おいしいよね
なんて 笑う
だから、うれしくて
わらった

 ああ しゃけのおにぎり たべたいね
 
 うん たべたいね

空はくれかけて
赤い、むらさきいろに
すべてを
ゆっくり
そめあげていく

光 ひかり
笹の舟は
もう みえない
ただ、だまって
ふたりして
川を見ていた

じぶんが すすんだ、
その先に
みえるものは
いまの 自分

 ―― どうぞ、ご多幸を。
2011-12-25 20:55:12