あんまんと、肉まん

あんまり、あめがふりすぎて
みどりいろの景色のなかに
ぼたんの花が咲いているのだけど
それが金魚のようだった
真みどりの葉に
うもれた金魚

隣にいた銀背さんは
てきとうなあいずちをうちながら
あったかいものを
たべるか、のむか、したいね、という

歩んでいく先に
コンビニがあるから
そこでおしるこでも買おうといったら
コンビニなら
俺は肉まんとあんまんにするよ、とこたえる
夕飯前なのに

それで、角をまがったら
なぜかコンビニはなくなっていて
ちいさなつぶれかけた変な店がある
看板に、はげたペンキで男の子の驚き顔と
動物屋、と
かかれている

あれ、こんなところに
こんなものって
あったっけ、
戸惑っていたら
あんまんは、肉まんは、と、
銀背さんが先にずかずか入ってしまった

慌てておいかけたら
店内はすこしうすぐらく
あたりが真青にみえ
天井がない

たくさんの金魚が
夜空のような
とおいとおい青に
ひらひらと泳いでいる

銀背さんが奥の方で騒いでる
あのね、肉まんとあんまんにするよ
いや、あの、あいにくうちは……
ぼくはね、くるまえから決めていたんだ
あんまんにするよ、肉まんと

ああ、お店の人はきっと、困っている
だってここは金魚屋じゃないか
慌てて走りよると
奥から出てきた銀背さんと
どんっとぶつかって
銀背さんがわたしに嬉しそうにいう
あんまんと肉まんと
かえたよ、
不思議な店でね
めったにないね
これが、肉まんとあんまんらしいよ

てのひらにのっていたのは
ちいさならんちうと
ちいさな出目金

さすがにたべられないよ
銀背さんがにこにこ笑う
出目金がわたしをみあげ
こんにちは、と
はずかしげに挨拶したから
こ、こんにちは、とかえす

これ、どうして
もってかえるのかしら
そう思ったら、肉まんとよばれたらんちうが急にいう

買われたからには
あなたのもの

おうちに良い金魚鉢がありますね
さきに入っていますから
何日かに水をかえて、よい餌をくださいね
そういって
煙をあげてきえる
ええ、と思ったら
出目金もはずかしげにぺこりとして
煙をあげてきえた

それいらい、うちに
肉まんとあんまん二匹が泳いでいる
たまに家のものがみな寝静まると
鉢からのがれ
家中をたんけんし
自由に遊んでいるらしい