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2017
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セキズイ
セキズイは宇宙の命だった
宇宙船からおりて
しばらく調査して
セキズイははじめ
お金というものが
この世界の主かと勘違いした
それで、千円札をひろってきて
(たくさん探したら落ちていた)
それに語りかけた
はじめまして、
ワタシは
とおくのほしからきました
この星の良いもの
たくさんあって
とりひきしたい
主の主を教えて下さい
話しかけられたお札は困ってしまって
セキズイにこたえた
ワタシはお金というものです
命ではありません
命は私を財布に忍ばせて
ものを買うのに交換したりするものです
ええ、あの
ぶよぶよした
肉をうごかす物体ですか
お金はまた困ってしまって
ええ、そうです
そう答えたきり
もう何も話すまいと
口を閉ざした
自分ではあまりにわからなかったから
セキズイは黙り込んでしまったお金をまえに
少し考えあぐねた
それでまた、見えない透明な円盤ー
それは円盤といえより
光る透明なダイオウイカのようだったけれどー
を、少し動かして
たくさん、また、
しらべた
ぶよぶよした
脆さの高いものが
この世の主とは
セキズイには
信じられないことだったけれど
多くの世界では
そんなこともあるのかと
うごく肉のルールを少し知って
それで、そのなかで
もっともセキズイの好みだった
脊髄から、自分の名前をつけた
……
降り立ったときに
セキズイは
なぜか、黒い皮
(背広と言うものらしい)をはおった
肉動のものたちに
とりかこまれた
そうして
つげられた
おまちしておりました
あなたを歓迎申し伝えます
それは真ん中の
白い皮を背中に羽織ったものから
つたえられた
それは驚くことに
テレパシーだった
……
セキズイの世界は、
非常に困窮を極めていた
なぜか、とつぜん派生した
奇妙な伝染病が
セキズイのなかまたちを
次々に葬っていく
星は悲しみに満ちていた
セキズイの世界の主
(この世界では神様というらしい)
かれは、この星の
とあるものが
その治癒をもたらすとつげた
だから
セキズイは
仲間たちに祈られながら
必死な思いで
ここまで船を動かしてきたのだ
……
セキズイに手渡されたのは
金色に光る石だった
セキズイは彼らと
テレパシーして
ようやく理解した
彼らは
セキズイがおとずれることを
しっていたし
必要なことも
しっていた
セキズイの主と
この世界の主が
はなしあわれたからだと
彼らは言う
彼らはセキズイに伝えた
それがあなた方の
困窮を救うでしょう
足りなければ、また
およりください
セキズイは変わりに
セキズイの星でできた
花の塊をかれらに与えた
……
あれから何年たったのだろう
セキズイは、いま
その時セキズイとやり取りした男と
なぜかアパートの一室に
住み込んでいる
なんでこんなことになったのか
セキズイにもいまいちわからない
トントン拍子というか
成り行きというか
あっちゃこっちゃ
いろいろあるたびに
セキズイも男もかりだされ
お前たちはもう知ってるんだし、とか
そんな理由で、色々頼まれ
結局ふたりでいてくれたほうが
便利だからという理由で
何不自由ないアパート生活に
おしこめられた
何年かするうちに
この星はなんだか
たいへんな
星間ポイントに変わっていた
この星でしかとれないものが
よくよく
ほかの星に求められたり
星旅行者が
ほかの星にいくまえに
この星で、はね休んだり……
セキズイは
宇宙からおとずれるものにたいし
この星のことを教えたり
問題が出たら駆けつけたりして
けんめいにつとめた
男はーー名はアザラと言った
あだ名らしい、本名は無くしたという
地球のさまざまな機関へ
そのたんびに
さまざまな働きをおこなった
あーしちめんどうだ
アザラが
いつもの口癖をほえながら
ため息をつく
セキズイ、コーヒーいれて
コーヒーー!
そうしてデーンと寝っ転がってしまう
セキズイはため息をかえしながら
キッチンに向かった
……
とおくのセキズイの
もとの星は
あのあたりかと
空を見上げて、
セキズイは
いつも、思う
たくさんのことが
たくさん、いきかっている
こんなことになるとは
星に、いたころは
思いもしなかった
いそがしい、けれど
わるくない
空には
色とりどりのランプが
点滅しながら
いろんなものたちが
丁寧に、相手をみつめながら
いきかっている
アザラも
空にうかぶ
見えない細工をされた
個性的な円盤たちを見上げながら
疲れた顔に
微笑みを浮かべている
まぁ、わるくないよな
アザラがいう
セキズイも
頷く
Series :
みえないもの
Tag:
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2017-11-24
12:50:42
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セキズイは宇宙の命だった
宇宙船からおりて
しばらく調査して
セキズイははじめ
お金というものが
この世界の主かと勘違いした
それで、千円札をひろってきて
(たくさん探したら落ちていた)
それに語りかけた
はじめまして、
ワタシは
とおくのほしからきました
この星の良いもの
たくさんあって
とりひきしたい
主の主を教えて下さい
話しかけられたお札は困ってしまって
セキズイにこたえた
ワタシはお金というものです
命ではありません
命は私を財布に忍ばせて
ものを買うのに交換したりするものです
ええ、あの
ぶよぶよした
肉をうごかす物体ですか
お金はまた困ってしまって
ええ、そうです
そう答えたきり
もう何も話すまいと
口を閉ざした
自分ではあまりにわからなかったから
セキズイは黙り込んでしまったお金をまえに
少し考えあぐねた
それでまた、見えない透明な円盤ー
それは円盤といえより
光る透明なダイオウイカのようだったけれどー
を、少し動かして
たくさん、また、
しらべた
ぶよぶよした
脆さの高いものが
この世の主とは
セキズイには
信じられないことだったけれど
多くの世界では
そんなこともあるのかと
うごく肉のルールを少し知って
それで、そのなかで
もっともセキズイの好みだった
脊髄から、自分の名前をつけた
……
降り立ったときに
セキズイは
なぜか、黒い皮
(背広と言うものらしい)をはおった
肉動のものたちに
とりかこまれた
そうして
つげられた
おまちしておりました
あなたを歓迎申し伝えます
それは真ん中の
白い皮を背中に羽織ったものから
つたえられた
それは驚くことに
テレパシーだった
……
セキズイの世界は、
非常に困窮を極めていた
なぜか、とつぜん派生した
奇妙な伝染病が
セキズイのなかまたちを
次々に葬っていく
星は悲しみに満ちていた
セキズイの世界の主
(この世界では神様というらしい)
かれは、この星の
とあるものが
その治癒をもたらすとつげた
だから
セキズイは
仲間たちに祈られながら
必死な思いで
ここまで船を動かしてきたのだ
……
セキズイに手渡されたのは
金色に光る石だった
セキズイは彼らと
テレパシーして
ようやく理解した
彼らは
セキズイがおとずれることを
しっていたし
必要なことも
しっていた
セキズイの主と
この世界の主が
はなしあわれたからだと
彼らは言う
彼らはセキズイに伝えた
それがあなた方の
困窮を救うでしょう
足りなければ、また
およりください
セキズイは変わりに
セキズイの星でできた
花の塊をかれらに与えた
……
あれから何年たったのだろう
セキズイは、いま
その時セキズイとやり取りした男と
なぜかアパートの一室に
住み込んでいる
なんでこんなことになったのか
セキズイにもいまいちわからない
トントン拍子というか
成り行きというか
あっちゃこっちゃ
いろいろあるたびに
セキズイも男もかりだされ
お前たちはもう知ってるんだし、とか
そんな理由で、色々頼まれ
結局ふたりでいてくれたほうが
便利だからという理由で
何不自由ないアパート生活に
おしこめられた
何年かするうちに
この星はなんだか
たいへんな
星間ポイントに変わっていた
この星でしかとれないものが
よくよく
ほかの星に求められたり
星旅行者が
ほかの星にいくまえに
この星で、はね休んだり……
セキズイは
宇宙からおとずれるものにたいし
この星のことを教えたり
問題が出たら駆けつけたりして
けんめいにつとめた
男はーー名はアザラと言った
あだ名らしい、本名は無くしたという
地球のさまざまな機関へ
そのたんびに
さまざまな働きをおこなった
あーしちめんどうだ
アザラが
いつもの口癖をほえながら
ため息をつく
セキズイ、コーヒーいれて
コーヒーー!
そうしてデーンと寝っ転がってしまう
セキズイはため息をかえしながら
キッチンに向かった
……
とおくのセキズイの
もとの星は
あのあたりかと
空を見上げて、
セキズイは
いつも、思う
たくさんのことが
たくさん、いきかっている
こんなことになるとは
星に、いたころは
思いもしなかった
いそがしい、けれど
わるくない
空には
色とりどりのランプが
点滅しながら
いろんなものたちが
丁寧に、相手をみつめながら
いきかっている
アザラも
空にうかぶ
見えない細工をされた
個性的な円盤たちを見上げながら
疲れた顔に
微笑みを浮かべている
まぁ、わるくないよな
アザラがいう
セキズイも
頷く