白い象

白色の象がいて
静かに流れる川に
釣糸を垂らしている
ほんのわずか、濡れたような瞳に
あたたかな色をたたえている

さかながつれたら
たべましょうか

そう、いわれる

川はたんたんとながれ
なかに銀色のさかなが
勢いよくおよいでいく

……

夜に家に帰り
寝床にはいって
今日あったことを
思い出していた

考えても、考えても
わからないことばかりが
おもいだされ、
だんだん、泣きたくなってきて
ぎゅっと、ふとんのはしを
にぎりしめた

とんとん、と
ノックの音
おじゃまします、と
朝方に出会った象がはいってきた

「不安がることはないです」

そういって
背中合わせに
布団にはいられる
ぐう、ぐう、と
すぐに寝息がきこえる
ぐう、ぐう
あたたかな背中の
のんびりしたうごきを
背中にじんわり感じているうちに
眠りに落ちた

妙に懐かしいような夢を見た

朝起きたら
象はどこにもいなかった
枕元にメモ用紙がおいてあり
「朝ごはん、ごはん二杯、頂きました」
おひつをあけたら、ちゃんと、二杯分、へっていた
2016-08-31 19:07:34