遠雷

神秘は
ある、とか
ない、とか
しんじつ、とか
うそ、ではなく
体感させようとおもったら
わりと容易い



たのもう

誰かに言われた気がして
返事をしながら
玄関まではしり、ドアをあけると





まっぐろい象がいて
ながい、というより
巨大な鼻を、
ゆっくり左右に
うごかしていた

「たのもう」

静に厚みのある声で、またつげる

「このあいだ
レイノウのことを
しらべたよ」

「れいかんしょうほうと
いうものがあるらしいのだ」

「それはこういうものだった」

そう、言って
懐から巻物をとりだした
書かれているものをていねいに
目でおいながら、
ふかく、つよく、明瞭な声でいわれる

「焦らせる」
「特別、重要と思わせる」
「不安をあおる」

脅すように
あおるらしい

そうして
うふふ、と
笑われる

おかしいね

君に、なにかありましたら
「そんなことはどうでもいい」を
おぼえておきなさい
君にとって、たいせつなのは
君と、君のあいする人と
日常なのですから

そうして、また
肩をゆすってわらわれる
2016-09-01 16:22:44