さくら

あか、もも、しろ
あの子が、そう
うたうから
そらは? ときいたら
うすあお、という

あか、もも、しろの花のいろ

うすいあおい真ん中に
しろい、しろい
弓のような月
ほんのり黄色
桜の白

白い白い 花 花

押し花作ったことがある?
押し花、あのね、
はなをひとつ、おしておして
それでかわかすの
新聞紙の間に花をいれて
おもいもので、何時間もおすの
何時間だったっけ

それで、おして
おして、朝起きると
ぺちゃんこなのよ

いつもつくって、あれっておもった
こういうふうに
したかったわけじゃ
ないのに

花 花 白い白い
たくさんこまかい
やわらかい ちいさい 花が
たくさん、みをよせあって
むやみにやわらかく
風に そおっと なでられる

あかっぽい桜と、しろっぽい桜があって
しろっぽいさくらは
やわらかい

はながほしいとおもって
花を、とじこめると
もう、花ではなくなってしまって
それが、かなしかった

桜の花は
おさないのころの
わらう母をおもわせる

抱かれた胸から見上げる母の
やさしい やさしい ほほえみの

もう 母に抱かれるような年でもなくて
それで、花の下にたつと

なぜか あたたかなぬくもりさえ
思い浮かぶ

あのころ 歌ってくれた
こもりうたは まだ
おぼえているだろうか

空を、抱きしめようとしたら
抱きしめられなくて
かなしくなった

桜の下にたてば 桜はわたしを
母のように 抱きしめて

あおくうすいそら 深く広く
桜ごと 私ごと あの子 すべて
抱きしめた
2011-04-08 14:47:12