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2011
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月星
やわらかな、月あかりの下
遠くの暗い地面の中に
すいこまれるように
自転車のライトが、消えていった
「一方通行」と
黄色に白いペンキでかかれた
さびれた看板のそばを通ると
まっすぐ前に
町の光が見えた
ここは、町のように
ぴかぴかしたあかりがないから、
上の暗い方に、まばゆいほど
たくさんの星が
やたらめったら
ちかちかしている
田んぼにはられた暗い湖に
星や月のひかりが
ゆらゆら うつりこんでいた
たとえば
ほたるがお尻からひかりをだして
あれは、なんだかんだいって
人は「メスを誘っているのさ」なんていって
「ああー」って納得するから
だから、きっと人間だって
他の生物から見たら
「あれはなにをしてるんだから知らないけれど
ぴかぴかしたものを扱う、生物だ」って
思うんだろうね
って、いったら
にまにましてさ
さっき御祭りでもらった水風船を
ぱしぱしぱしゃんって
ぼんぼんして遊んで
こたえない
ぴかぴかしたものを扱う
生き物に
過ぎないんだろうなぁ
って、なんだか
もういっかい
つぶやいてしまったら
それで、って
きいてくれた
あのさ、あのね
猿の1匹
毛のない猿の一種にすぎないんだろうなぁって
そいつらがさ
なんだかんだいって
なんか、やたらそういったものを扱って
それで、でも
他の生物からしたら
迷惑な猿だなぁ
ぐらいに過ぎないんじゃないかなぁって
うっふっふ
迷惑な猿って
水風船
黄、赤のしま
みどり、黄色、青のひらひらが
上に下に
ぱしゃぱしゃ
なんのつもりか
知らないけれど
いつだって
みんな
自然の中にいる
いきものの
一種類に過ぎないから
きっと
みんな
えらく傲慢な 迷惑な猿だなぁって
ちょっとだけ、嫌な気持ちで
私らを見ているんだとおもう
ずいぶん、下手な考えだね
水風船を
急にてからとって
まるで、おてだまのように
両手でぱしゃぱしゃ
しだした
そんなのしたら、
きっと、割れちゃうよ
彼が、はは、って笑った
私は、ふと気がついて
いった
人間って生き物に過ぎないよ
そんなの
誰だって気がついていたさ
だけど、なんでか
忘れてしまうように
こころがけてきたんだ
忘れたかったんだ
だからなおすことが
できないできたんだ
あのさ、この間
最近の本を
ばって読んだの
本の、傾向かな
あのさ、あるんだ
なんでかね
あるんだよ
みんな、ここ
何年も
なにかに、なにか
おおきな敵意を
感じていたみたいだよ
おおきな押し付けられるような
押しつぶされそうな
完全な敵意を
逆らいようのない
ほとんど、完璧な
支配的な、敵意を
感じていたみたいだよ
それが、地球だっていうの
彼の目をみたら
すきとおった
瞳が私の目をみつめかえす
手のひらの水風船を
右手においた
なにかに、なにかを感じる場合
それは、感じたもののなかにある
それぞれの
人たちが感じていた敵意は
人間が、人間にむかって
もってきた
自己嫌悪と、自分たちへの敵意が
形を変えた
ほとんど、もう
ぼくらは逃れられないんじゃないか
というほど
辛い気持ち
ぼくらは、もう
戻れないんじゃないか
崩壊をみな
どこか予測しているような
毎日だった
でも、まだ大丈夫
ああ、それでも
この敵意は何なんだろう
どうして
こんな
絶望的な気持ちが
ふと、わくんだろう
未来に楽しいことはあるの
未来はしあわせなの
誰も 未来の幸せを
ほんとうに幸せだっていう
この先を
思いえがけない時間が
何日も 何時間も
何年も
続いてきた気がする
未来の落ち込みを
感じていた気がする
自分への 敵意から
にげられないほど
ずっと、多分、みんな
知っていたんだよ
自分自身の首をしめて
しめあうような
いきぐるしさ
君は何が言いたいの
そういうから
笑って見せた
何もいいたくない
あなたと手をつなぎたい
こんなに恐い
どうしようもない力のない
生き物が
ずっとみんな
――傲慢で慢心してしまったから――
ひとりぼっちだったんだもの
だから あなたと
手をつなぎたい
Series :
中編
Tag:
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2011-05-11
21:26:36
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遠くの暗い地面の中に
すいこまれるように
自転車のライトが、消えていった
「一方通行」と
黄色に白いペンキでかかれた
さびれた看板のそばを通ると
まっすぐ前に
町の光が見えた
ここは、町のように
ぴかぴかしたあかりがないから、
上の暗い方に、まばゆいほど
たくさんの星が
やたらめったら
ちかちかしている
田んぼにはられた暗い湖に
星や月のひかりが
ゆらゆら うつりこんでいた
たとえば
ほたるがお尻からひかりをだして
あれは、なんだかんだいって
人は「メスを誘っているのさ」なんていって
「ああー」って納得するから
だから、きっと人間だって
他の生物から見たら
「あれはなにをしてるんだから知らないけれど
ぴかぴかしたものを扱う、生物だ」って
思うんだろうね
って、いったら
にまにましてさ
さっき御祭りでもらった水風船を
ぱしぱしぱしゃんって
ぼんぼんして遊んで
こたえない
ぴかぴかしたものを扱う
生き物に
過ぎないんだろうなぁ
って、なんだか
もういっかい
つぶやいてしまったら
それで、って
きいてくれた
あのさ、あのね
猿の1匹
毛のない猿の一種にすぎないんだろうなぁって
そいつらがさ
なんだかんだいって
なんか、やたらそういったものを扱って
それで、でも
他の生物からしたら
迷惑な猿だなぁ
ぐらいに過ぎないんじゃないかなぁって
うっふっふ
迷惑な猿って
水風船
黄、赤のしま
みどり、黄色、青のひらひらが
上に下に
ぱしゃぱしゃ
なんのつもりか
知らないけれど
いつだって
みんな
自然の中にいる
いきものの
一種類に過ぎないから
きっと
みんな
えらく傲慢な 迷惑な猿だなぁって
ちょっとだけ、嫌な気持ちで
私らを見ているんだとおもう
ずいぶん、下手な考えだね
水風船を
急にてからとって
まるで、おてだまのように
両手でぱしゃぱしゃ
しだした
そんなのしたら、
きっと、割れちゃうよ
彼が、はは、って笑った
私は、ふと気がついて
いった
人間って生き物に過ぎないよ
そんなの
誰だって気がついていたさ
だけど、なんでか
忘れてしまうように
こころがけてきたんだ
忘れたかったんだ
だからなおすことが
できないできたんだ
あのさ、この間
最近の本を
ばって読んだの
本の、傾向かな
あのさ、あるんだ
なんでかね
あるんだよ
みんな、ここ
何年も
なにかに、なにか
おおきな敵意を
感じていたみたいだよ
おおきな押し付けられるような
押しつぶされそうな
完全な敵意を
逆らいようのない
ほとんど、完璧な
支配的な、敵意を
感じていたみたいだよ
それが、地球だっていうの
彼の目をみたら
すきとおった
瞳が私の目をみつめかえす
手のひらの水風船を
右手においた
なにかに、なにかを感じる場合
それは、感じたもののなかにある
それぞれの
人たちが感じていた敵意は
人間が、人間にむかって
もってきた
自己嫌悪と、自分たちへの敵意が
形を変えた
ほとんど、もう
ぼくらは逃れられないんじゃないか
というほど
辛い気持ち
ぼくらは、もう
戻れないんじゃないか
崩壊をみな
どこか予測しているような
毎日だった
でも、まだ大丈夫
ああ、それでも
この敵意は何なんだろう
どうして
こんな
絶望的な気持ちが
ふと、わくんだろう
未来に楽しいことはあるの
未来はしあわせなの
誰も 未来の幸せを
ほんとうに幸せだっていう
この先を
思いえがけない時間が
何日も 何時間も
何年も
続いてきた気がする
未来の落ち込みを
感じていた気がする
自分への 敵意から
にげられないほど
ずっと、多分、みんな
知っていたんだよ
自分自身の首をしめて
しめあうような
いきぐるしさ
君は何が言いたいの
そういうから
笑って見せた
何もいいたくない
あなたと手をつなぎたい
こんなに恐い
どうしようもない力のない
生き物が
ずっとみんな
――傲慢で慢心してしまったから――
ひとりぼっちだったんだもの
だから あなたと
手をつなぎたい