花の星
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小説
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2011
> 鏡が欲しい
鏡が欲しい
月が瞬いていて
それが、
あまりに美しいと
わらいながら
啼いた
かれは、わたしの手をとって
ただ
しずかに、わたしをひいて
歩いてくれる
暗い くらい 闇の中で
ちいさな瞬きの音がする
月が あるから
恐いけれど まだ すこし大丈夫
「そらに、怒りの咆哮がうずまいているね」
かれがいったから
私は上を見た
そしたら
たしかに
尾をまわしながら
怒りの咆哮が
うずまいていた
長い長い尾を
びし びし びしと
まわしながら
啼いていた
いなないていた
怒鳴り声は、咆哮
怒りは
叫び声にしかならない
わたしは、
人間なのに
人間に怒っていいのか
わからない
人間だから、怒っていいの、とか
人間だけど、怒ってはいけないの、とか
そういったら
罪悪感のない人に 気をつけなさい
だの、笑ってあなたはいった
あれは、悪魔に魅入られている
だから、こたえた
ひとでない人は
人の姿をしているから
よけいに、こまる
あなたのくるしみは、
あなたがわかせている
身から出たさびだから
とか、簡単には
いえないから
こまるよ
人を、愛せない間
その人は、いまだに
人になっていないんだと思う、
そういったら
手を、ぎゅってつよくにぎってくれた
それから
指でしめした
とおい空
あれが、北斗七星
けっこう、大きいんだね
地球の裏には
南の星が
ままたいているのは
本当?
:
この間、
わたしは
痛い思いをした
いたいいたい
痛い思いをした
その痛い、は
いまだ、ぐらぐらゆれいてる
人を 愛せない人が
愛してるごっこをしていて
愛してるごっこだから
もちろん
自分の 都合のいい 想いだけを
もとめていて
それで、
わたしは、
人より、人を苦しめるいきものを、
しらない
人よりも、人を
地獄にみちびくいきものを
しらない
彼らは、なぜ
悪鬼になりましたか
だまって見上げる
星のいろは
北の色
大空は
こっちが北なら
下が南
地球の北と、南と
大空の、北と、南は
すこし、ちがうんだね
どうか人に
人の痛みを
教えてください
人の痛みをしって
はじめて
人は 人となれる
:
彼が、すこし
わたしの目を、覗き込んだ
わたしは思う
わたしは、きちんと
いきているでしょうか?
あなたの目に どんな風に
うつるんでしょうか
彼は、わらった
人間なんだから
人間を傷つける
人間は、怒りなさい
けれど、なにが
悪で、なにが
善か、まるっきり
わからない
ばかだね
かれは、わらう
ばかだね
:
わたしは、足りない人間で
人を傷つけるひとでなしを
愛することが出来ない
知っているのは
彼らは、許されない、ということだけで
許されない、というのは
ただ、許されない、というだけで
それは、わたしでも
かれでも
この世界でもない
ただ、許されないは、
ただ、許されないのだ
こころの、意識をもって
自分の醜さに怯える日がくるまで
彼らは、
許されない
あの、良心は
いったい、どうして
まったく、違うところにあるんだろう
:
鏡が欲しい、といったら
彼は、わらった
鏡でいいの、と
きかれたから
わたしは、まるで
泣きながら
まるで、滝のように
泣きながら
怒り任せに噛むことを
なんどか、してみたんです
けれど
それでは
戻らないんです
鏡がほしい
人間を
人間にできる
鏡が欲しい
:
いま、人の顔をした、心無い人は
人を思いやれない
愛せない
あれは、なんでだか
あなたは、知っていますか
怒りの咆哮
怒りの咆哮は
ずっと
空に
ながれていて
たまに、とんでもない
つんざくような
音をかきならす
まるで
いかずちのようだ
:
わたしは
やさしい咆哮を
いつか、あげることが
できるだろうか
愛の咆哮を
きちんと
あげることが
できるだろうか
こころをうつす
鏡が欲しい
わたしにも
あなたにも
こころをうつす
鏡が欲しい
醜さも 優しさも 愛も 軽蔑も すべて
あなたをうつす
鏡が欲しい
Series :
中編
Tag:
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2011-05-17
00:45:11
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2011
> 鏡が欲しい
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それが、
あまりに美しいと
わらいながら
啼いた
かれは、わたしの手をとって
ただ
しずかに、わたしをひいて
歩いてくれる
暗い くらい 闇の中で
ちいさな瞬きの音がする
月が あるから
恐いけれど まだ すこし大丈夫
「そらに、怒りの咆哮がうずまいているね」
かれがいったから
私は上を見た
そしたら
たしかに
尾をまわしながら
怒りの咆哮が
うずまいていた
長い長い尾を
びし びし びしと
まわしながら
啼いていた
いなないていた
怒鳴り声は、咆哮
怒りは
叫び声にしかならない
わたしは、
人間なのに
人間に怒っていいのか
わからない
人間だから、怒っていいの、とか
人間だけど、怒ってはいけないの、とか
そういったら
罪悪感のない人に 気をつけなさい
だの、笑ってあなたはいった
あれは、悪魔に魅入られている
だから、こたえた
ひとでない人は
人の姿をしているから
よけいに、こまる
あなたのくるしみは、
あなたがわかせている
身から出たさびだから
とか、簡単には
いえないから
こまるよ
人を、愛せない間
その人は、いまだに
人になっていないんだと思う、
そういったら
手を、ぎゅってつよくにぎってくれた
それから
指でしめした
とおい空
あれが、北斗七星
けっこう、大きいんだね
地球の裏には
南の星が
ままたいているのは
本当?
:
この間、
わたしは
痛い思いをした
いたいいたい
痛い思いをした
その痛い、は
いまだ、ぐらぐらゆれいてる
人を 愛せない人が
愛してるごっこをしていて
愛してるごっこだから
もちろん
自分の 都合のいい 想いだけを
もとめていて
それで、
わたしは、
人より、人を苦しめるいきものを、
しらない
人よりも、人を
地獄にみちびくいきものを
しらない
彼らは、なぜ
悪鬼になりましたか
だまって見上げる
星のいろは
北の色
大空は
こっちが北なら
下が南
地球の北と、南と
大空の、北と、南は
すこし、ちがうんだね
どうか人に
人の痛みを
教えてください
人の痛みをしって
はじめて
人は 人となれる
:
彼が、すこし
わたしの目を、覗き込んだ
わたしは思う
わたしは、きちんと
いきているでしょうか?
あなたの目に どんな風に
うつるんでしょうか
彼は、わらった
人間なんだから
人間を傷つける
人間は、怒りなさい
けれど、なにが
悪で、なにが
善か、まるっきり
わからない
ばかだね
かれは、わらう
ばかだね
:
わたしは、足りない人間で
人を傷つけるひとでなしを
愛することが出来ない
知っているのは
彼らは、許されない、ということだけで
許されない、というのは
ただ、許されない、というだけで
それは、わたしでも
かれでも
この世界でもない
ただ、許されないは、
ただ、許されないのだ
こころの、意識をもって
自分の醜さに怯える日がくるまで
彼らは、
許されない
あの、良心は
いったい、どうして
まったく、違うところにあるんだろう
:
鏡が欲しい、といったら
彼は、わらった
鏡でいいの、と
きかれたから
わたしは、まるで
泣きながら
まるで、滝のように
泣きながら
怒り任せに噛むことを
なんどか、してみたんです
けれど
それでは
戻らないんです
鏡がほしい
人間を
人間にできる
鏡が欲しい
:
いま、人の顔をした、心無い人は
人を思いやれない
愛せない
あれは、なんでだか
あなたは、知っていますか
怒りの咆哮
怒りの咆哮は
ずっと
空に
ながれていて
たまに、とんでもない
つんざくような
音をかきならす
まるで
いかずちのようだ
:
わたしは
やさしい咆哮を
いつか、あげることが
できるだろうか
愛の咆哮を
きちんと
あげることが
できるだろうか
こころをうつす
鏡が欲しい
わたしにも
あなたにも
こころをうつす
鏡が欲しい
醜さも 優しさも 愛も 軽蔑も すべて
あなたをうつす
鏡が欲しい