花の星
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2011
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うた
私は、江戸っ子みたいになりたいんです
江戸っ子はね
あれ 喧嘩と火事は江戸の華、なんてね
そんなわけあるかあ、って
どう考えても、そんなわけないことを
開き直ってるんです
そういったら、くっくっくっと
笑ってくれた
手にもった
かんざし、かんざしに
金色の花細工
それ、誰にあげるの?
あんたに、あげる
ええ、わたし
髪、ゆわない
いいからさしなよ
それで、金色の花かんざし
もらってうれしくて
うきうきした
私は、江戸っ子みたいになりたい
あんな、喧嘩と火事は江戸の花ぁ!!! なんてね
開き直ってしまえるぐらい
ばかばかしいって
おもいきってしまいたい
喧嘩が、いまみたいに
深刻になってしまったのは
きっと、
人が、ひとを
もしかしたら
まったく信頼できないような
そんな日が
続いたのかなぁ、
って、適当に言ったら
彼は、私の足元に咲く
やみのなかにぼおっと光る
牡丹雪のような
ちいさくて、かわいい花をつんだ
「これもあげる」
「いいよう」
「あげるよお」
花が、頭にいっぱいになっちゃうじゃん
それに、足元の花って
なんか、おしっこがかかってそうで
いやなのよう
あれは、いい栄養だから
よけい、きれいなんだよう
逃げたら追ってくるし
いやだ、いやだ、またあたまに花が増える
みちみち、花ばかり
人の頭に飾る気かしら
金の花かんざし
キンキンキン
月にひかって
きんきらきん
喧嘩なんかばかばかしいから
おお、またやってるやってる
ふっふっふけんか相手に
楽しむぐらいに
なりたいなぁ
えいや、とっとう、えいや
とっとう
ねえ
人だって ひと皆々
傷ついたり 悲しんだり
わらったり 喜んだり
怒ったり うれしがったり
人 みな ひとひと
ねえ どれほどに
苦しんでも
苦しんでも
人生と
生きることが
いとしい、大切なことだと
わかってほしい
たいへんに、大切な
いとしい いとしい いとしいことだと
おもう
そういえば、
ずっと、ずっと
忘れていたの
もう、忘れないように
覚えておこうと思う
私は、人の中の
ひとり ひとりの
愛の根を
芽生えさせたい
それだけが、やりたかったの
なにがいいとか
なにがわるいとか
あの人が、どうだとか
この人が、どうだとか
そんなことは
どうでもよくて
わかっても わかってくれなくても
闇の中に
花ばかり
ぼおっと奇麗に
道なりに
ひとつ、ひとつ
白い黄色い赤いだいだい青い紫黄色い 白い
白の花は
月の光をすうように
きんきんきらきら
きんきらきら
木の幹も、草のにおいも
まるっきり
生きている
手をつないで
赤とんぼ、ゆうやけこやけ、
あとは、そうだ
ふるさとを、うたった
隣にいてくれてうれしい
Series :
短編
Tag:
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2011-05-18
23:21:07
花の星
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江戸っ子はね
あれ 喧嘩と火事は江戸の華、なんてね
そんなわけあるかあ、って
どう考えても、そんなわけないことを
開き直ってるんです
そういったら、くっくっくっと
笑ってくれた
手にもった
かんざし、かんざしに
金色の花細工
それ、誰にあげるの?
あんたに、あげる
ええ、わたし
髪、ゆわない
いいからさしなよ
それで、金色の花かんざし
もらってうれしくて
うきうきした
私は、江戸っ子みたいになりたい
あんな、喧嘩と火事は江戸の花ぁ!!! なんてね
開き直ってしまえるぐらい
ばかばかしいって
おもいきってしまいたい
喧嘩が、いまみたいに
深刻になってしまったのは
きっと、
人が、ひとを
もしかしたら
まったく信頼できないような
そんな日が
続いたのかなぁ、
って、適当に言ったら
彼は、私の足元に咲く
やみのなかにぼおっと光る
牡丹雪のような
ちいさくて、かわいい花をつんだ
「これもあげる」
「いいよう」
「あげるよお」
花が、頭にいっぱいになっちゃうじゃん
それに、足元の花って
なんか、おしっこがかかってそうで
いやなのよう
あれは、いい栄養だから
よけい、きれいなんだよう
逃げたら追ってくるし
いやだ、いやだ、またあたまに花が増える
みちみち、花ばかり
人の頭に飾る気かしら
金の花かんざし
キンキンキン
月にひかって
きんきらきん
喧嘩なんかばかばかしいから
おお、またやってるやってる
ふっふっふけんか相手に
楽しむぐらいに
なりたいなぁ
えいや、とっとう、えいや
とっとう
ねえ
人だって ひと皆々
傷ついたり 悲しんだり
わらったり 喜んだり
怒ったり うれしがったり
人 みな ひとひと
ねえ どれほどに
苦しんでも
苦しんでも
人生と
生きることが
いとしい、大切なことだと
わかってほしい
たいへんに、大切な
いとしい いとしい いとしいことだと
おもう
そういえば、
ずっと、ずっと
忘れていたの
もう、忘れないように
覚えておこうと思う
私は、人の中の
ひとり ひとりの
愛の根を
芽生えさせたい
それだけが、やりたかったの
なにがいいとか
なにがわるいとか
あの人が、どうだとか
この人が、どうだとか
そんなことは
どうでもよくて
わかっても わかってくれなくても
闇の中に
花ばかり
ぼおっと奇麗に
道なりに
ひとつ、ひとつ
白い黄色い赤いだいだい青い紫黄色い 白い
白の花は
月の光をすうように
きんきんきらきら
きんきらきら
木の幹も、草のにおいも
まるっきり
生きている
手をつないで
赤とんぼ、ゆうやけこやけ、
あとは、そうだ
ふるさとを、うたった
隣にいてくれてうれしい