業音

ざあざあと
雨が降っていました

木々の緑がびしょぬれになって
水滴のなか
頭を下げていました
うすい、やわらかな白い花が
その落ちてくる水に
うれしそうに
しずかにぬれていました

わたしは、さびしいのです

そう お伝えしました
しかし こたえはありませんでした
蛙はうれしそうにげこげこと
さけんでいました
そして、道路には
海と、川と間違えたのか
魚がたくさんでていました

魚がたくさん
空を見上げて
ううん ううんと
していました

ぴかり ぴかりと
やわらかな金色のいなびかり
それが、まるで
竜のようでした

わたしは、さびしいのです

もう一度おつたえしたら
ぼろぼろと涙が
こぼれてしまって
わたしは 泣きたかったわけではないのです

 嘘ではないのに
 本音のひとつではあるのに
 なぜ
 そのば そのばで
 なんとか

 搾り出した言葉は

 わたしを ごまかして
 しまうのだろう

わたしは
私の醜さや
きしんでしまう善良を
わかっているような
気がします

 それほど できないことを
 わたしは
 自惚れず

 それほど 善い人間ではないことを
 自惚れないで
 生きて生きたいです

どうしてって
わたしは それほど
綺麗にはなれないのです

 ぼたぼたと
 おちていく涙は
 しかし わたしは
 泣きたかったわけではないのです

 わたしは 目を開いて
 ぼたぼたと 涙をおとしていました

私を 愛していた人を
詰ってしまった

詰ってしまった時
後悔にくるしむ
心がわかった

しかし なじりたかった
そして
なじったことで
その人が苦しんだことがわかって

 ああ 人は醜い 人は醜い
 人は弱い
 
 よわいことが悲しいと

私は 叫んだのです

 かみなりが ぴかりぴかりと
 また ひかりました

その人は
見栄と虚栄を
身にまとい
善い人間のふりをした
しかし 善い人間に
なりたかったことは
かわりはない

わたしは
あなたは
どんな人間になりたいのでしょうか
そして
そこまでいくには
どれほど 長い道のりでしょう

 私の業音は
 私の傍で
 たえず 流れております

 ごうん ごうん と
 私をいつか のみこもうと
 虎視眈々と

虚栄心 見栄
それらのひどい恐ろしさ
傲慢 うぬぼれ
正義感
おそろしい 業音

わたしは わたしが悪いと
あなたほど 思えることが
できないのです

だから あなたの方が
そのこころをもって
わたしより ずっとずっと
美しいと思います

さびしさを 自覚すること

 ただ それだけのように思います

 そして 悲しいように思いました
2011-08-22 19:58:30