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エギンのたび
♪~♪~ りん りんりんとなる 星空のした きみといたね いつも ♪~♪~ りん りんりんとなる 星空のした 君の思いなんて いつも わからなかった ♪~♪~ りん りんりんとなる 星空のした ♪~♪~
♪~♪~ わかりあえるなんて うそだとおもった 硬い横顔 なんにもわからなかった ♪~♪~ りん りんりんとなる 星空のした ♪~♪~ ぼくはぼくのことで せいいっぱいで 君のことも人のことも よく 見えていなかったんだ ♪~♪~
♪~♪~ 今更になって後悔している ♪~♪~ りん りんりんとなる 星空のした ♪~♪~ でも ひとはみな 子供のころを ♪~♪~ 後悔するものなんだと思う ♪~♪~ りん りんりんとなる ♪~♪~ やり直したい過去 今から続く未来 明日は
♪~♪~ 今が 過去の 後悔の上に あるのなら ♪~♪~
エギンのたびのお話をはじめるよ
むかしむかし、赤い車をぴゅんぴゅんとかっとばして はいうえいを飛ばしている かっこいい女の子が居ました 彼女の名前はエギンエギン
彼女のハンドルの横にねむっている犬の名前は ハローハロー ぶちのある駄犬です
今日もはいうえいをエギンの赤い車がびゅうびゅうとばして 空のかたほうに細い白い 稲光のはしっこのような 月が昇っていました
エギンはハローにいいました
「あんたともだいぶ長いこと、付き合いがつづいたね」
ハローはかたみみをちょっとあげて エギンをみあげたあと、なんだ、お菓子かとおもったのに。 そういうように また寝入ってしまいました。
ハローの鼻から くすぴ、くすぴ、と音が鳴ります
「あんたがそこに居なかったころ、私は男を乗せていた」
エギンの目の前はいつまでもつづく銀色の道が流れています 後ろの暗い夜に、夜に
エギンがまたぽつりとつぶやきました。 「あのいかれた男は最悪だった、もう覚えちゃいないけれど、一度あんまり腹が立って、その座席からけりだしたんだ」
ハローがすぴぴっと音を鳴らして 「それで」いったようでした
「いってやったさ。 『アタシが気に入らないなら出ていけばいい、気に入らない同士分かれるのがお似合いだ。だいたいあんたに好かれなくても私はかまわない。あんたは自分がさもいいようなつもりなだけの、たんなるウカレポンチさ』
エギンはすこしため息をつきました 「よく、舌がまわったもんだよ。 いまはもう、そんなことはいえないね」
ハローがすぴぴっと、笑うように鼻を鳴らします 「憎たらしい犬だよ 聞いたふりさえしないんだ」 エギンは笑います
『あんたが好きなのはあんただろう』 ふ、と 昔の自分の言葉が耳に浮かびました。 「わかかったかね」
別れてよかったかどうかなんて、エギンにはわかりません。でも、気が合わない同士なら 別れるのが やっぱり いちばん 良いんです。そう
ただ、おたがい好きな相手も、好いてくれる人も、いなかったから。それだけのこと。 「若いころの恋はみんなそうなのかもしれないねぇ」エギンはふふふと笑いました
月は空のかたっぽにかかって、細いまま流れています。空を見上げたら月明かりでしょうか、わずかに雲が光っていました。
ハローが一寸おきあがり、寝相を変えました。エギンが小さな声で鼻歌をうたいはじめます。
♪~♪~ 誰にも知られず のんだなみだの量 ほねにたまる さびしさなのか おもいなのか ♪~♪~ ただ よこになって 夜を見上げて ♪~♪~ だれにもいえない涙のことを
♪~♪~ のんだ涙の量 骨にたまるのは さびしさなのか 人への愛か ♪~♪~ さびしいから 人を好きになる ♪~♪~ どこから間違い ♪~♪~ なにから 間違い
♪~♪~ 女はかなしい 男はおかしい ♪~♪~ ひとはちいさい
♪~♪~ 夜はいつも ただ 暗い
「町明かりが夜の闇を消すように 光るだろう、あれはね、みんな、みんな、さびしいからさ。夜の闇って、さびしいのさ。だから、みんな、ひとりのさびしさをごまかしたいから 光をつけるのさ」
「電源をつけたら どこにでも人がいる気がして、隣に人がいないことも 忘れられるような気がする」
「ハロー。」
「わたしたちは、無頼にならなきゃね。」 それが強さかは、わからないけど。
こっそりつぶやいた声を聞いて、ハローは面白くもなさそうにぷひぷひと鼻を鳴らし、一度だけ尻尾を動かしました。
骨にたまった涙の数 どれだけさびしい夜を どれだけの数 人は過ごしているのでしょう。 隣に ひとがいても きっと 「私たちは無頼にならなきゃね」
ひとりにならなきゃ さびしいから
はいうえいの銀色の道、赤い車はぴゅうううっと走り去り、細い細い稲光のような月が、かすかに光りました。 もしかしたら、そんなエギンを笑うように。
エギンのたび おしまい
Series :
中編
Tag:
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2011-10-01
21:26:39
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♪~♪~ 今更になって後悔している ♪~♪~ りん りんりんとなる 星空のした ♪~♪~ でも ひとはみな 子供のころを ♪~♪~ 後悔するものなんだと思う ♪~♪~ りん りんりんとなる ♪~♪~ やり直したい過去 今から続く未来 明日は
♪~♪~ 今が 過去の 後悔の上に あるのなら ♪~♪~
エギンのたびのお話をはじめるよ
むかしむかし、赤い車をぴゅんぴゅんとかっとばして はいうえいを飛ばしている かっこいい女の子が居ました 彼女の名前はエギンエギン
彼女のハンドルの横にねむっている犬の名前は ハローハロー ぶちのある駄犬です
今日もはいうえいをエギンの赤い車がびゅうびゅうとばして 空のかたほうに細い白い 稲光のはしっこのような 月が昇っていました
エギンはハローにいいました
「あんたともだいぶ長いこと、付き合いがつづいたね」
ハローはかたみみをちょっとあげて エギンをみあげたあと、なんだ、お菓子かとおもったのに。 そういうように また寝入ってしまいました。
ハローの鼻から くすぴ、くすぴ、と音が鳴ります
「あんたがそこに居なかったころ、私は男を乗せていた」
エギンの目の前はいつまでもつづく銀色の道が流れています 後ろの暗い夜に、夜に
エギンがまたぽつりとつぶやきました。 「あのいかれた男は最悪だった、もう覚えちゃいないけれど、一度あんまり腹が立って、その座席からけりだしたんだ」
ハローがすぴぴっと音を鳴らして 「それで」いったようでした
「いってやったさ。 『アタシが気に入らないなら出ていけばいい、気に入らない同士分かれるのがお似合いだ。だいたいあんたに好かれなくても私はかまわない。あんたは自分がさもいいようなつもりなだけの、たんなるウカレポンチさ』
エギンはすこしため息をつきました 「よく、舌がまわったもんだよ。 いまはもう、そんなことはいえないね」
ハローがすぴぴっと、笑うように鼻を鳴らします 「憎たらしい犬だよ 聞いたふりさえしないんだ」 エギンは笑います
『あんたが好きなのはあんただろう』 ふ、と 昔の自分の言葉が耳に浮かびました。 「わかかったかね」
別れてよかったかどうかなんて、エギンにはわかりません。でも、気が合わない同士なら 別れるのが やっぱり いちばん 良いんです。そう
ただ、おたがい好きな相手も、好いてくれる人も、いなかったから。それだけのこと。 「若いころの恋はみんなそうなのかもしれないねぇ」エギンはふふふと笑いました
月は空のかたっぽにかかって、細いまま流れています。空を見上げたら月明かりでしょうか、わずかに雲が光っていました。
ハローが一寸おきあがり、寝相を変えました。エギンが小さな声で鼻歌をうたいはじめます。
♪~♪~ 誰にも知られず のんだなみだの量 ほねにたまる さびしさなのか おもいなのか ♪~♪~ ただ よこになって 夜を見上げて ♪~♪~ だれにもいえない涙のことを
♪~♪~ のんだ涙の量 骨にたまるのは さびしさなのか 人への愛か ♪~♪~ さびしいから 人を好きになる ♪~♪~ どこから間違い ♪~♪~ なにから 間違い
♪~♪~ 女はかなしい 男はおかしい ♪~♪~ ひとはちいさい
♪~♪~ 夜はいつも ただ 暗い
「町明かりが夜の闇を消すように 光るだろう、あれはね、みんな、みんな、さびしいからさ。夜の闇って、さびしいのさ。だから、みんな、ひとりのさびしさをごまかしたいから 光をつけるのさ」
「電源をつけたら どこにでも人がいる気がして、隣に人がいないことも 忘れられるような気がする」
「ハロー。」
「わたしたちは、無頼にならなきゃね。」 それが強さかは、わからないけど。
こっそりつぶやいた声を聞いて、ハローは面白くもなさそうにぷひぷひと鼻を鳴らし、一度だけ尻尾を動かしました。
骨にたまった涙の数 どれだけさびしい夜を どれだけの数 人は過ごしているのでしょう。 隣に ひとがいても きっと 「私たちは無頼にならなきゃね」
ひとりにならなきゃ さびしいから
はいうえいの銀色の道、赤い車はぴゅうううっと走り去り、細い細い稲光のような月が、かすかに光りました。 もしかしたら、そんなエギンを笑うように。
エギンのたび おしまい