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金の虫
♪~♪~ のみこめない痛みを前に 迷っているような日々 言えば傷つき いわなければ泣くこともない ♪~♪~ だけど のみこめない思いを前に ただ ♪~ ♪~ 見えない思いの重さ
金の虫けらの話を始めるよ
むかしむかし あるところに、小さな森のこかげで小さな虫たちが集っていた 一匹の虫がいった 甘いものでも食べたいな もう一匹の虫が言う ぜいたくはてきださかい もう一匹が言う ぜいたくってなんだ
虫たちはたがい、やいのやいのといいながら そろそろ休憩はおわろうだなんていいあって、また仕事に戻り始めた
お日様はさんさんとあつく 雲はすうすうと風にのっていた
一匹の虫がどうしてもわからないようで もう一匹の虫に「なあ、ぜいたくってなんだ」っていう
聞かれた虫は戸惑いながら「そら、おなかいっぱいに甘いものをたべることだ」という
「よくあることじゃないか」 まだまだ疑問で、虫は言う
聞かれた虫はなにかだんだん、りふじんなめにあわされているぞ、おれは と思い 「うるさい、しごとをすればいいのだ」と 叫んだ
疑問をもってしまった虫は、虫の巣にかえって虫の王様に聞いてみた 「おうさまぜいたくってなんだ」
王様はその虫のすがたをしみじみみながら 「そうだな」といった
それきり無言になっちまった王様を見て 虫は「…人と話しているときに眠る打なんて おうさまは、ぼけたのかもしれない」と思った。 静かにその場を後にして森に帰って「ぜいたくってなんだ」と もう一度、かんがえてみた
ぜいたくはてきだといった虫が来て「おう、ひまなのか」という 考え込んでいた虫は「ぜいたくはてきか」といったら 虫は「おう、てきだ びんぼうになっちまう」そういう
「ぜいたくってなんだ」そうきいたら てきだといった虫が「満ち足りることだ」という
「それがあまいものか」といったら 敵だといった虫は良く考えてから 「あまいものじゃみちたりねえな」 ははは と わらった
「おう それより 仕事手伝え、お前のぶん まだあるど」 そういうから虫は何か考えてみたかったし、わかったようなわからなかったような気もしたけれど、とりあえず仕事を手伝うことにした
見上げたら空はかんかんに太陽は真上にあった 青い青い中に白い雲がおおきなはやさで動いていた すこしくらっとして、虫はため息をついて目を下げたら みながら一所懸命に働いていた
(みちたりるってなんだ)
虫は思ったが、誰に聞いてもそれは答えがない気がしたし、もしかしたらつらいことかもしれないから、口をとじて 仕事をしはじめた
いろいろな虫が話していた みな 似たような話だった
お金があったら 恋人がいたら 食べること のむこと まぁ そんなような話だった 虫はなんだか泣けてきた それは情けないわけではなかった なにか、哀しかった
夜になってみなが寝静まるころ、眠れなかった虫は空のお月様をみて買った酒をちびちび飲んでいた
それで、ふ、とわかった
(みんな みちたりねえんだな)
虫は、きゅうに哀しくてつっぷしておうおう泣きながら泣き叫んで ごうごうなきながらなきさけんで ごうごうごうごう泣いていたら 涙がとんでもなく流れてしまって その涙で自分がおぼれるようになってしまった
「おお いくらなんでも なきすぎた」
そう思って 涙の湖からぷかりとおよいで浮かんで月を見上げたら 月は何にも言わないし、ただ空にのぼっていた
さびしさのあまり 目的が見えないあまり 心を 小さな生き物は覚え違えってしまうのでしょう
虚栄を満たしたって、たしかに心みちたりしない。 だけど、さびしさから、焦燥から逃れたいと思う小さな生き物の心はそれほど罪なことだろうか
ただ 虫は自分の涙の上に浮かんで 空を見上げながら ぷかりぷかりと浮かんでいた
「これはこれで良いような気がする」そう思った
空っぽなまま 満たないまま
たまに なきすぎた湖に浮かぶのも そう悪くない
ふと、そういう思いが満ちて 虫はうたをうたった
小さな小さな声だったからどこにも響かなかった。だけど歌を歌った。
なんとなく、いま自分が満ちていないのは おもいちがいで、実はさびしさでみちていて それはきっと何か、いまだ出会わない誰かを自分から、満たせるからなのかもしれないと そう、思った
金の虫 おしまい
Series :
中編
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2011-10-01
21:27:04
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金の虫けらの話を始めるよ
むかしむかし あるところに、小さな森のこかげで小さな虫たちが集っていた 一匹の虫がいった 甘いものでも食べたいな もう一匹の虫が言う ぜいたくはてきださかい もう一匹が言う ぜいたくってなんだ
虫たちはたがい、やいのやいのといいながら そろそろ休憩はおわろうだなんていいあって、また仕事に戻り始めた
お日様はさんさんとあつく 雲はすうすうと風にのっていた
一匹の虫がどうしてもわからないようで もう一匹の虫に「なあ、ぜいたくってなんだ」っていう
聞かれた虫は戸惑いながら「そら、おなかいっぱいに甘いものをたべることだ」という
「よくあることじゃないか」 まだまだ疑問で、虫は言う
聞かれた虫はなにかだんだん、りふじんなめにあわされているぞ、おれは と思い 「うるさい、しごとをすればいいのだ」と 叫んだ
疑問をもってしまった虫は、虫の巣にかえって虫の王様に聞いてみた 「おうさまぜいたくってなんだ」
王様はその虫のすがたをしみじみみながら 「そうだな」といった
それきり無言になっちまった王様を見て 虫は「…人と話しているときに眠る打なんて おうさまは、ぼけたのかもしれない」と思った。 静かにその場を後にして森に帰って「ぜいたくってなんだ」と もう一度、かんがえてみた
ぜいたくはてきだといった虫が来て「おう、ひまなのか」という 考え込んでいた虫は「ぜいたくはてきか」といったら 虫は「おう、てきだ びんぼうになっちまう」そういう
「ぜいたくってなんだ」そうきいたら てきだといった虫が「満ち足りることだ」という
「それがあまいものか」といったら 敵だといった虫は良く考えてから 「あまいものじゃみちたりねえな」 ははは と わらった
「おう それより 仕事手伝え、お前のぶん まだあるど」 そういうから虫は何か考えてみたかったし、わかったようなわからなかったような気もしたけれど、とりあえず仕事を手伝うことにした
見上げたら空はかんかんに太陽は真上にあった 青い青い中に白い雲がおおきなはやさで動いていた すこしくらっとして、虫はため息をついて目を下げたら みながら一所懸命に働いていた
(みちたりるってなんだ)
虫は思ったが、誰に聞いてもそれは答えがない気がしたし、もしかしたらつらいことかもしれないから、口をとじて 仕事をしはじめた
いろいろな虫が話していた みな 似たような話だった
お金があったら 恋人がいたら 食べること のむこと まぁ そんなような話だった 虫はなんだか泣けてきた それは情けないわけではなかった なにか、哀しかった
夜になってみなが寝静まるころ、眠れなかった虫は空のお月様をみて買った酒をちびちび飲んでいた
それで、ふ、とわかった
(みんな みちたりねえんだな)
虫は、きゅうに哀しくてつっぷしておうおう泣きながら泣き叫んで ごうごうなきながらなきさけんで ごうごうごうごう泣いていたら 涙がとんでもなく流れてしまって その涙で自分がおぼれるようになってしまった
「おお いくらなんでも なきすぎた」
そう思って 涙の湖からぷかりとおよいで浮かんで月を見上げたら 月は何にも言わないし、ただ空にのぼっていた
さびしさのあまり 目的が見えないあまり 心を 小さな生き物は覚え違えってしまうのでしょう
虚栄を満たしたって、たしかに心みちたりしない。 だけど、さびしさから、焦燥から逃れたいと思う小さな生き物の心はそれほど罪なことだろうか
ただ 虫は自分の涙の上に浮かんで 空を見上げながら ぷかりぷかりと浮かんでいた
「これはこれで良いような気がする」そう思った
空っぽなまま 満たないまま
たまに なきすぎた湖に浮かぶのも そう悪くない
ふと、そういう思いが満ちて 虫はうたをうたった
小さな小さな声だったからどこにも響かなかった。だけど歌を歌った。
なんとなく、いま自分が満ちていないのは おもいちがいで、実はさびしさでみちていて それはきっと何か、いまだ出会わない誰かを自分から、満たせるからなのかもしれないと そう、思った
金の虫 おしまい