朝川で根っこに栄養がある草つんでいたら
からす天狗がとんできて
おまえ、血だらけじゃないかと
薬をくれた

からす天狗はとんでいったが
その翼が真っ黒だった

―― さて 健気さが
善人とわたしは思うけど
傲慢さが
悪人と思うけど

―― たしかに
たしかに
傲慢な
うぬぼれが
地獄をまねいたと
思うけど

―― 赤い原の真ん中に
天狗がいて
天狗のようで
ないていた

―― 天狗が居て
天狗なようで
泣いているよう
ああ わらっていた

―― むかし修行で
力をつけたものが
己の力にうぬぼれ落ちた姿を天狗という

邪でも聖でもない
ただ 力をうぬぼれるもの

―― 天狗がわらうので
おかしいなぁと思う
痛くて痛くて
痛くて 痛くて
痛くて 痛くて
からからなわらう
カラス

―― ああなんだ
あれは カラスじゃないか
あれは 笑うだけのカラスじゃないか
腐肉をつついて ゴミつついて
なきながら 笑いながら
もがいている
黒い黒いカラスじゃないか

―― 誰でも
こう扱われたいと
いう願いが
あるように思う

こう思われたい
こう見られたい
それより ずっと深い
根深い 願い

 ―― こう扱われたい

―― 一人一人の
信頼が罪ではないなら
一人一人の
願いも 罪には
思えない

おかしいなぁと思う
痛くて おかしいなぁと思う

―― 赤い夕陽
カラス 何故なくの
ちいさなこが
山に居るから

あれ カラス 何故 なくの
ちいさなこが
やまにいるから

まだ 生きているから


―― 赤い夕陽

―― さけんでも さけんでも
てにはいらないのは
ほんとうに なりたい 自分だった
2011-11-09 13:27:52