ピリピリ涙

星がピリピリ
泣く夜でした

私はさんぽしていました
月は真白い半月で
やわらかな光を
したに投げかけていた

ふっと
蛙がにひき
はなしていました

白い蛙でした

―― 私が あなたに
つけた傷は
まだ なまなましい
痛みが ありますか

いっぴきがいって
いっぴきが
笑う
げげこ
げ げこ

―― きずついたって
いいんだよ
きずつけたって
いいんだよ

かなしんだって
かまわない
なやんだって
いいんだよ

―― なんだって
いいんだよ
だれも
せめていない

―― もう 大丈夫
ありがとう
大丈夫
がまんしないで
大丈夫だから

―― 空のてっぺんから
ちらほら
光ながら 綺麗な花弁が
おちる

しんとした夜に
季節外れのコオロギが
りぃーって
ひとつ、ないた

―― いたみ あるときは
なんもできんよ

無理をしてたら
うらがえる

無理は 無理だから

―― だも てのひら
空に上げて
痛いときは
わたしは あんたに
いうから よこしなさい
いたみ よこしなさい

―― 痛んだって
いいんだよ
情けなくても
いいんだよ

―― きずつけた
きずついた時
胸に穴
あいたみたいになって
くろい水みたいな
きもちながれる

あんたが
ねがうなら
胸のいたみ
全体 そらに
なげてやる

―― 痛いときは いうから
かまわない
かしなさい

―― 空に光があいてて
あれが すうてくれる
かなしさ あんた
頑張りすぎなんだよ
なけないほど
しんどくしちゃ
ダメだよ

たまには ダメに
なりなよ

―― 空に光があいてて
あれが 水のように
あんたの かなしみ
すうてくれる

だから かまわない

なきなさい

―― あんたは
許すことが
下手だね

急に突風がまきあがり
なにか温かいようで
はなびらも
なにもかも
きりきりまいながら
空に空に
のぼりだした

目を閉じ
つぎに目をあけたら
蛙はもう
いっぴきもいなくて
ただ、風があった印に
土は綺麗なクロイロに
光をおびていた

見上げたら
月を前に
鳥が泣いていた
高い高い
鳴き声だった
2011-11-27 18:18:18