海蛍

へびが
のたうちまわるのは
全身で
じぶんを あじわうためです


 じぶんを、 あじわうためです


そういったら
あなたは
笑いながら
まだ、ただ
舟のうえ

ぎいこ ぎいこ
ゆれながら
私には
なにも いわないで
岸辺は見えない

いつから
川から海に
流れ出てしまったのでしょう

光のない
真っ暗闇の海で
ひたすら静かな、世界の中に
だーん だーんと
すこし重い
うみなり

空の上の方に
白い月
こまかい 星
延々とした星明り

知らなかったのでしょう
それとも
あなたは
知っていたのでしょう

すべて
あとにならないと
わからないもので

あとになって
ようやく
それがわかるのです

 なんでしょうね
 あの 静かな 悔い

取りとめない話を
つづけながら
忘れないようにしようと
胸の中のしんぞうを
とりだして

ただ、かき記した

以前書いた ひとの 文字の下に。

まちがい つみを、おかすもの。

私も 罪を
たくさん
おかしてきました
私は裁かれるのでしょうか

そういったら
おかえり、と
言われた

けっきょく
私の話しか
できなかった
正しい話も
すべての話も
できなかった

かえたかった
私ではない話を
したかった

でも



うみぼたる

ちいさな綺麗な光が
ふわ ふわ
ふわふわ 浮いている
ここからは
私が決めなければ
ならないのですね

そう わかっていた

すがるものでも
いいなりになるものでも
ない

 小さな声で
 おとが もれた
 はじめてきく
 うた だった

ろーりー うー ろーりー うー
海の中 ちいさな光り輝く魚たちが
気がつけば
たくさん たくさん
泳いでいて
空の星はまたたき
海の星魚は
およぎ
わたしたちは
その中を
ただ ひたすら
舟に のって
進んでいる

指針 が ほしかった
みとめてくれる ひと が
ほしかった

 わたしで あることを
 だれかに ささえて ほしかった

でも
それはもう
大丈夫に かわった


ただ、いきたいところだけが
くっきり
消えない赤い花のように
くっきり、わかっていた
2011-12-10 20:31:52