がとんぼ

まっしろなくもが
たゆんたゆんとながれ
金色の星をかくしたり、
だしたりして
あそんでいます
ちいさながとんぼが
さきほどふった雨あとの
空をうつすみずたまりに
さっそく足をつけています

さあ、すいすい
さあ、すいすい
嬉しいようで
なんべんも
なんべんもすべります

ちいさな男の子が
お姉さんにつれられて
まえから歩いてきました

お姉さんは
茶色の髪の毛を
ももいろのわごむでしばり
中学生らしく
おりめのついた制服で
すこし、けんけんした顔をしています
ちいさな男の子は
青いかっぱをかぶって
きいろの長靴をちゃぶちゃぶいわせながら
小声でうたをうたっています

がとんぼに気がついて
ねぇ、ねぇ
こいつはどこからきたの?
みずたまりが
かわいたら、どうするの?
と、お姉さんに問いかけてみたら

お姉さんは男の子をみて
それから
がとんぼをみて
また真剣にかんがえながら
がとんぼには
みずたまりが世界なのね
わたしたちも
そうかもね
なんて、荒んだようにこたえます

子供は、はてな、というよえな顔をして
つい、つぶやきます
なにぃ……?

それから
がとんぼのそばに黄色の傘のえをついて
ぱしゃぱしゃとがとんぼを困らせます

わたしをあいせと
いいながら
あいないものが
あいされなさに
ひとをうつ

ひとに
すかれたい
ひとに
よく、おもわれたい
根をたどれば
ひとに
よろこばれたいのよ
みんな、ひとに
自分をもって
よろこばれたいのよ

ひとに
よろこばる
自分で
ありたいのよ
……


お姉さんは
気づかないまま
さくさくと進んでしまいます
男の子が、まって!まってよ!と
泣き叫ぶようにおいすがり
もうまってもらうぞ、と
お姉さんの手のひらを握ります
お姉さんはすこしわずらわしそうに
それでもかすかに笑って
歩き始めます

どきどきしていた
まるっきり、どきどきのまま
生きていた
気がついたら
肌年齢とともに
曲がりかど
ゆっくり、まいにち
遠い日になって

深刻な目であるき
真剣な荒みを
抱えて
子供たち

斜にかまえて
わずかな諦めと
遠距離で
人とかかわる
わたしたち


空には小鳥たちが
ぴちぴち
ぴいぴい
ちいちいと
たくさんたくさん
うたいながら
あそんでいます
2012-05-24 10:00:00