すもも

あかい
あかい、きれいなすももをたべながら
ももももももももも
なにがいいたいのか、
そう、つぶやく
すももも、ももも、もものうち?
そう、それ

すっ

かじったとたん
すっぱそうにさけぶ

すっぱ

あたし、桃のはなみたいわ

真緑色のほそながい草が
なまあたたかな風に
さう、さわさわ
さう、さわさわと
ながれている
ところどころに
うすく白く光るちいさな花
すみれ、すずらん
たんぽぽ、あざみ
窪みには
透明な水が深く溜まり
そのそばに古くおおきな木が、こけむしてはえている

どうしてか、魚が
水のなかと空をまちがえて
ひかりながらおよぎ
およぐたびに
そのひかりがチラチラ瞬く
まちがえたと
きづいたとたん
あれはまた、水にもどるんだろう

彼の手紙
いまどき古風な便箋に
あおいボールぺん、
なんどもかきなおしたんだろう
はしが、しんぴんで
こんどは失敗しまいというように
文字がおもく、ふるえている

夜空のうえに
ふねがあって
それがゆあんゆよん
ゆあんゆよんと
ひかりながら
ゆれています

わたしたちは
海のふねで海をわたり
空のふねで空をわたります

唐突にはじまるでだしは
わたしの名前さえない

彼のあおじろい
骨ばった手のひらを思い出す
あたたかで、やけにしずみこんで
くらい温もりがあった
煙草をのむひとで
手のひらも、すこし
ヤニくさかった

あおいあおい空をないで
鳥がとんでいった
ちいさな声
魚がきがついにように
慌てて、池に落ちる

ボチャッ……

きずつけることを
おびえる
よろこびを
きみは
わかっていますか

きみは
すべてをつかい
いきてください

おしまいに
そうつづられて
サインがあった
どうしてこんな手紙にまで
へたくそな豚の絵をかくんだろう
2012-05-24 22:05:42