花の星
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2012
> すみれ
すみれ
まっぐらやみに
あおいあおい菫が咲いて
それが、ほのあかるく光っている
その花びらの
いちまいいちまいが
やわらかく風にそよいでいる
ここはどこだろうと
上を見たら
ちかちかとまたたく
大量の星
深い闇空に流れている
ああ、ここは
そこで
ぱ、と
目が覚めた
障子ごしに
明るい光が差し込んでいて
それが顔にかかり
まぶしい
目をもういちどとじ
それでもまぶしいから
しょうがなしに
おきあがると
寝汗をかいていたらしい
ねまきが重い
隣の部屋から、姉の声がする
おきたの、
ずいぶん
うなされていたみたい
静かな声
重いねまきを不快に思いながら
着替えをだそうと
箪笥のひきだしをあける
みたらね
あなた、
じぶんのくびを
りょうてで、こうしめあげて
くるしい
くるしい
だれだ、だれだ
くるしい、だれだって
叫んでいたわ
「こう」のところで
どうも演技をしてくれたらしい
部屋ごしでは
みえないのに
そう、と
かんたんに返答する
ふいに、
箪笥のとなりにたてかけてあった松葉づえが
倒れかかってきて
頭をしたたかに打ちつける
……なんていやな……
ごちると
となりの姉の声が
しんぱいそうに響く
おあいにくさまね
コーヒーでも淹れてあげるわ
着替えたら
そそくさと
下に来なさいよ
姉のことばは
いちいち、変だと
松葉杖をたてなおしながら思う
きみ、まつばづえがないと
うごけないなんて
おもっちゃいけないよ
まつばづえは
君を支えるためにあるんであって
まつばづえに
あやつられては
いけない
ふと、
医者の声を思い出す
ドラマみたいなことをいう、とおもい
ちょっと腹が立った
そういうことではないと
いいたかった
姉が台所にむかったらしい足音がする
着替えながら
おなかがへったときのような
みょうに、不安定な気持に襲われて
すこし息を止める
じぶんのくびをしめながら
だれだ、だれだと
さけんでいたわ……
どうして首を
自分でしめていたんだろう
その手を外せば
楽になれるのに
姉が台所で
変な自作歌を歌っている
こんすたんちのーぷる
こんすたんちーぷる
りありぃーふぃーふぃー
着替えを取り出しながら
その声に
すこしだけ、笑う
Series :
短編
Tag:
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2012-05-11
15:00:55
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あおいあおい菫が咲いて
それが、ほのあかるく光っている
その花びらの
いちまいいちまいが
やわらかく風にそよいでいる
ここはどこだろうと
上を見たら
ちかちかとまたたく
大量の星
深い闇空に流れている
ああ、ここは
そこで
ぱ、と
目が覚めた
障子ごしに
明るい光が差し込んでいて
それが顔にかかり
まぶしい
目をもういちどとじ
それでもまぶしいから
しょうがなしに
おきあがると
寝汗をかいていたらしい
ねまきが重い
隣の部屋から、姉の声がする
おきたの、
ずいぶん
うなされていたみたい
静かな声
重いねまきを不快に思いながら
着替えをだそうと
箪笥のひきだしをあける
みたらね
あなた、
じぶんのくびを
りょうてで、こうしめあげて
くるしい
くるしい
だれだ、だれだ
くるしい、だれだって
叫んでいたわ
「こう」のところで
どうも演技をしてくれたらしい
部屋ごしでは
みえないのに
そう、と
かんたんに返答する
ふいに、
箪笥のとなりにたてかけてあった松葉づえが
倒れかかってきて
頭をしたたかに打ちつける
……なんていやな……
ごちると
となりの姉の声が
しんぱいそうに響く
おあいにくさまね
コーヒーでも淹れてあげるわ
着替えたら
そそくさと
下に来なさいよ
姉のことばは
いちいち、変だと
松葉杖をたてなおしながら思う
きみ、まつばづえがないと
うごけないなんて
おもっちゃいけないよ
まつばづえは
君を支えるためにあるんであって
まつばづえに
あやつられては
いけない
ふと、
医者の声を思い出す
ドラマみたいなことをいう、とおもい
ちょっと腹が立った
そういうことではないと
いいたかった
姉が台所にむかったらしい足音がする
着替えながら
おなかがへったときのような
みょうに、不安定な気持に襲われて
すこし息を止める
じぶんのくびをしめながら
だれだ、だれだと
さけんでいたわ……
どうして首を
自分でしめていたんだろう
その手を外せば
楽になれるのに
姉が台所で
変な自作歌を歌っている
こんすたんちのーぷる
こんすたんちーぷる
りありぃーふぃーふぃー
着替えを取り出しながら
その声に
すこしだけ、笑う