ふくろう

空は真水のようにうすく
透き通って
しずまりかえり
まるで昼のように明るい夜

まんなかの上の方にある
お月さまは
やわらかなあめ玉のように
白く甘い金色をまとい
きらきら
ちかちかまたたいています

あおみずいろの葉の上にいた
いっぴきの小さな
フクロウの子が
自慢の金色の翼を
たぷたぷとなめながら
お月さまは
僕のものなのです
そうつぶやきました
ぼくのもの……

お月さまの
銀色のあかりは
ふかくきらめいて
葉のうえに
きらきらとまたたき
ふくろうのこに
静かな煌めきを
まとわせます

だまってふくろうの子が
おつきさまを
みあげていたら
すこしふとった
母のフクロウがきて
いいこいいこ
こよい、こよい
はよう
おふとんにはいって
ねむりなさい、と
小さな声で誘いました

フクロウの子は
真剣な顔で
母様、
おつきさまと
ねむりたいというのです
それで母のフクロウは
すこしばかりとまどい
ゆっくり考えてから
では、明かりを
いれましょうね

ねどこに
明かりがはいるよう
ととのえましょう、
そうして
おまえは
おつきさまの明かりに
抱かれて眠れますよ
そういいます

それで子ふくろうのこは
ようやく安心したのか
真剣に、
そうですね、とつぶやいて
もういちど
お月さまをみあげ
ちいさな金色のめんめを
ぱちぱちにかいしばたいて
手を振りました

おつきさまの
うでにいだかれる
さいりょうのこと
うれしいな、と思います
それからふった翼を
もういちど舌でなでて
おやすみなさい、と
丁寧にいって
巣にもぐりこみました

母はこの背中を見守ってから
おつきさまをみあげ
すこしばかりして
ため息をつきました

この子をみまもってください
みまもってください
ちいさく
三回となえ
きゅっと
胸の前でてをくんで
おいのりました

それから自分も巣にはいり
いのったことさえ忘れて
あしたのジャムは
なににしようと考えます

子のふくろうは
安心しきって
ミントのかおりのする
木のなか、
つきあかりをあびながら
もう、すうすうと
寝息をたてています

お空の上の
お月さまは
まるで笑っているように
しずかにまたたいています
2012-07-21 09:45:24