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2012
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とりのこ
あいいろの水の上に
しずかにしずかに
黒い木のみが流れていて
そのなかから
小さな歌声が響いていました
ていていちんちえ
ちていててていいいてい
黒い木のみの半分が
くりぬかれ
まるで居心地のいい舟のようです
その舟の中に
ちいさなちいさな
七色の翼を持った鳥の子がいて
それがまたうたうのです
ちいてて
ていてい
ちいてて
それから鳥の子は
さきの島でつんでおいた
むらさきのはなびら
それをやわらかくして
しきつめた
寝床をみつめました
だれかぼくのよこで
ねむったりしないかしら
そうしてまた
鳥の子はうたいはじめます
少しばかり寂しいのです
あいいろの川の上
あいいろの空が流れ
そのなかに
たくさんの星がながれ
ふかくまたたく
天の川が見えます
ちかりちかりまたたき
煌めきながら流れる
天の川
みつめていたら
よいよいよほほ
と、ちいさなちいさな
きれいな鳥が飛んできました
青と赤と金色の翼で
すこしすきとおった
きれいな金の目をして
またよいよるほほほと
うたいました
そうして藍色の空の
うえのほうで
羽ばたきながら
ちいさなとりをみつめ
ぱちぱちと
まばたきして
首を傾げました
あのね、そちら
ここちよい、
小さな鳥は
少しばかり戸惑い
――なぜってこんなきれいな鳥は
見たことがなかったからです――
ええ、とても良い舟です
そう答えました
もうすこし
きれいな鳥はとんで
また、
ぱちぱちと
まばたきをして
それから
いっしょにいてもいい
そうたずねました
小さな鳥は
うれしそうに
ときときしながら
ぼくはしんぞうがときときするよ
どうしてかしら
そうつぶやいて
おちつくおまじないを
つぷつぷつぶやいて
それから、ぜひ、と
いいました
カレが降りるとき
やはり小さな鳥は
ぼくはしんぞうがときときするよ
カレはどうなのかしら、と
思います
カレは
しずかに
星の煌めきのように
まばたきをしながら
カレの隣に
そっとおりたち
それから
ふたりで
紫の花びらの
上で、眠りました
空はたくさんの星がきらめき
月はゆっくりとうごいて
水は深いあいいろ
舟はゆっくり
流れていきました
Series :
短編
Tag:
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2012-07-22
10:00:00
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しずかにしずかに
黒い木のみが流れていて
そのなかから
小さな歌声が響いていました
ていていちんちえ
ちていててていいいてい
黒い木のみの半分が
くりぬかれ
まるで居心地のいい舟のようです
その舟の中に
ちいさなちいさな
七色の翼を持った鳥の子がいて
それがまたうたうのです
ちいてて
ていてい
ちいてて
それから鳥の子は
さきの島でつんでおいた
むらさきのはなびら
それをやわらかくして
しきつめた
寝床をみつめました
だれかぼくのよこで
ねむったりしないかしら
そうしてまた
鳥の子はうたいはじめます
少しばかり寂しいのです
あいいろの川の上
あいいろの空が流れ
そのなかに
たくさんの星がながれ
ふかくまたたく
天の川が見えます
ちかりちかりまたたき
煌めきながら流れる
天の川
みつめていたら
よいよいよほほ
と、ちいさなちいさな
きれいな鳥が飛んできました
青と赤と金色の翼で
すこしすきとおった
きれいな金の目をして
またよいよるほほほと
うたいました
そうして藍色の空の
うえのほうで
羽ばたきながら
ちいさなとりをみつめ
ぱちぱちと
まばたきして
首を傾げました
あのね、そちら
ここちよい、
小さな鳥は
少しばかり戸惑い
――なぜってこんなきれいな鳥は
見たことがなかったからです――
ええ、とても良い舟です
そう答えました
もうすこし
きれいな鳥はとんで
また、
ぱちぱちと
まばたきをして
それから
いっしょにいてもいい
そうたずねました
小さな鳥は
うれしそうに
ときときしながら
ぼくはしんぞうがときときするよ
どうしてかしら
そうつぶやいて
おちつくおまじないを
つぷつぷつぶやいて
それから、ぜひ、と
いいました
カレが降りるとき
やはり小さな鳥は
ぼくはしんぞうがときときするよ
カレはどうなのかしら、と
思います
カレは
しずかに
星の煌めきのように
まばたきをしながら
カレの隣に
そっとおりたち
それから
ふたりで
紫の花びらの
上で、眠りました
空はたくさんの星がきらめき
月はゆっくりとうごいて
水は深いあいいろ
舟はゆっくり
流れていきました