花の星
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短編[Year.2012]
2012
2012-03-26
15:26:44
すきま
空は春めいていて うすいガラスのような 水色と群青の色に 花の香りが流れている 鳥がその空をとびかい 小さい奇麗な声で 楽しそうにさえずっている 誰と誰が はなしこんでいる (……)
(795文字数)
2012-03-22
18:37:55
おかえりなさい
てのひらをにぎりしめ もう一度ひらくと あかい、あかい いろがついて 綺麗だなぁ、と思う なんとなく 手のひらを見ていると なんとなく 安心する なぜかは、わからない 並木(……)
(1144文字数)
2012-03-20
16:17:54
こがえるかえる
泉わきでて 透明にしずんだ影のなか とくとくとした 池のほとり 白い花びらを 金にかれつつ 花がさいている そのみずのなかに なにか金色のながい魚がいる たうたうと こもり(……)
(776文字数)
2012-03-20
12:08:36
鳥と蜥蜴
おさないころ きらいなものを わるいときめて きずつけるのが 勇気だった 強さだった 決めつけるのが りかいだった 従わせるのが 優しさだった あたたかな思いは 本能(……)
(1176文字数)
2012-03-19
15:33:36
なんでもない
あたたかな日溜まりのなか 白くながい蛇がひとついて 草間に空いたところから うっとりと空をあおいでいた 青くすみとおった空には やわらかくうすい雲がながれ よくみると 夜に遅れた星が(……)
(585文字数)
2012-03-18
18:48:37
虎
虎がいた サーカスから逃げてきた草食の虎で 銀に見間違うばかりの白い毛並みをして エメラルドグリーンの竹林にすんでいた 竹林は夕陽がさすと金色になり 朝日が昇ると桃色に光り たまに雨が(……)
(890文字数)
2012-03-18
09:56:00
孔雀
きんぞこ公園の地下には 名前のない水族館がある こしてきたばかりの三条に あんないついでにいってみたら、 ほどよくすいていて 観客は笑いながら歩き回っている スーパーの紙袋をさげたおば(……)
(1186文字数)
2012-03-16
15:46:21
うすぐもり
深いあおいそらに 真っ黒い細いみきを たいへんにのばして 梅が咲いています 白い梅はまだ蕾もありながら さきはじめた花花を 風のなかにあてて ここちよい薫りを漂わせます かたむいた(……)
(1378文字数)
2012-03-14
15:46:01
子
泣いている子がいたから 赤いマフラーをあげた その子はうっとうしげに 私をしげしげ見あげて なにこれ、いらないといった そうだね、と いっておいた ざんざらのあめが ばらばらに(……)
(1452文字数)
2012-03-14
13:00:00
こおり
耳の痛いような まっくろいよぞら 寒くて手先がふるえる さきに降った まっしろい雪が 地面にどろどろのだまになってる ちいさな学校のすみをとおったら その校庭にひとがいて それがお(……)
(1051文字数)
2012-03-14
13:00:00
蜥蜴
ばつばつと 長く黒い水が 渦をかいてながれている 魚なんだろう しいろい背鰭が ちかちかひかり ひっきりなしに ういたりしずんだり よい、夜ですね ママサマがそういう ママサマ(……)
(1127文字数)
2012-03-02
18:04:03
あんまんと、肉まん
あんまり、あめがふりすぎて みどりいろの景色のなかに ぼたんの花が咲いているのだけど それが金魚のようだった 真みどりの葉に うもれた金魚 隣にいた銀背さんは てきとうなあいずちをう(……)
(1060文字数)
2012-03-02
12:22:07
ウサギと亀
真っ白い雪の中 まみどりのひいらぎが うもれていました しずかな音のない公園に いっぴきのうさぎが ひょうひょうとはいってきて おお、いけない 遅刻しそうだ、といって くすくす笑い(……)
(786文字数)
2012-02-29
19:46:06
星
ふなべりで 話などできない人と ふたりきりになった その人はどこか異国から来たらしい 言葉はつうじない その人は英語で ワタシは日本語 どちらも、互いの言葉がわからない ただ、(……)
(1284文字数)
2012-02-27
21:04:45
蜘蛛
少しうすい霧が立ち込めている みずみずしい緑色の葉の上に 真っ白い蜘蛛がいて 霧越しの森を見ている 蜘蛛の巣はたくさん水滴がついて それが真珠のようにひかり ふるえている 蜘蛛がぽつ(……)
(703文字数)
2012-02-26
17:06:27
にくまん
あちらのほうは きっと、海なんだろう まっくろい中で 小さな光が沢山瞬いて ゆったりゆったりゆれている 潮の香りって、すごいですね そういうから そうね、しめっています そういう (……)
(1139文字数)
2012-02-24
17:49:53
雨
暗い色のパズルを選んだら つくるうちにきがめいってしまった 失敗だったと笑って 邪魔をしようかどうしようか なやんでいるらしいみゃーこに話しかける やめておいてよ おわるまではさ 顔(……)
(736文字数)
2012-02-24
16:31:08
ぎもん
まっかな花びらが まっくろい川の上を すう、すうと 流れて過ぎ去る 白く、ながい うつくしい魚が したのほうにいて 黒い川の中 ゆっくりとおよいで うろこをきらめかせている (……)
(955文字数)
2012-02-22
21:32:15
川
赤紫の蝶が 川原のあちらこちらにある 青白い炎のまわりに とびかっていて たきぎの焦げるにおいがする ばちばちはぜる音の中 ぶう、ぶううんと なにか、重い羽音がする 蛾でもいるのだ(……)
(711文字数)
2012-02-19
13:54:12
キリンの子
角が甘く痛いという、たぶん彼はキリンのひとつなのだろう 首はもうすぐのびるんだろうと思う はえかけた角がいたがゆいと、またないて わたしに頬をすりつける でも、かいたらひりひりするんで(……)
(596文字数)
2012-02-19
11:03:21
クラゲの大群
あたたかく、 あかく、光がさしこんで 海のなかはゆんわり温もり ちいさな銀色の小魚たちが ひかりひかり、泳いでいく ――あたたかですね、 亀がいう 大分長く生きたらしい こおらから(……)
(501文字数)
2012-02-19
00:25:19
鵜飼い
明るい花びらのしたに わけのわからない 柔らかい、ぬめぬめしたものがいて それがしゃみせんをくれという それで、さしだしたら べんべんべん、べんべんべん、と ならしはじめる ―― リ(……)
(709文字数)
2012-02-18
22:25:20
いびつ
だあんだんと 海なりのような音が響いている ただ真っ白くあかるい月が くらい空にまっすぐのぼり 砂浜をぼおっと白に光らせている 歩くたびに後ろに紫色の足跡がついて おもしろがっていたら(……)
(718文字数)
2012-02-08
21:35:26
まぼろし
さぼてんが 土の中から生えてきた 亀が二匹 その傍を ゆっくりあるいて 通り過ぎる 雨でもふったのか 地面は湿ってぬくもり むうっとした空気が立ち上っている 長靴がやわら(……)
(1412文字数)
2012-02-07
21:00:00
芋虫
今日は彼女の誕生日で くまのぬいぐるみとバラを買って 桃色のリボンで飾り付けて わきにかかえてもっていったら 彼女は部屋中に桃色の花を散らばせて茫然としていた どうしたん、そう聞いたら (……)
(838文字数)
2012-02-07
18:44:10
うらら
台所で猫人が歌っている うらら、うらら うらうらうらー うららーうららー うら? うら? うら? だんだん、らが 巻き舌になってきて うるぁあ うるぁああ うるぁああと 叫ぶように(……)
(1114文字数)
2012-02-06
21:56:41
白い恐竜
真っ白い布にひとはり ほつれないよう、ひとはり 誕生日になにがほしいと聞いたら 真白い恐竜のぬいぐるみといわれて 茶色い小さな縫い目で目をつけて ひとはり 白い恐竜のぬいぐるみをつくった (……)
(627文字数)
2012-02-04
21:25:56
クラゲ
海の底まで見透かせるような夜 塩辛い波のうえに 氷るような月が きらんきらんと冷たく光る 月明かりのちょうど下に クラゲがひとついて それが白い花びらをはんでいる なにをしている (……)
(757文字数)
2012-02-03
22:54:55
白猿
柔らかく細かい雨が 音もなくふっている 銀色の雨 澄みわたった空の右のほうに ましいろい、かけた月が きらきらひかっている たくさんの波紋をえがきながら 水海に雨がふりそそぎ (……)
(658文字数)
2012-02-03
08:41:08
花
まっぐろい川べり 黒い影のような草花が風にざわめいている 空にはたくさんの雲が流れ ぐろぐろと渦を巻いて また先へと流れている そばに小さな黄色い風船をもった子が居て その風船に薬局の(……)
(1041文字数)
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